第5話「またしても舞う怪盗」

 上に登った方法は直ぐに分かりました。

 水です。


「ここにもゴミ捨て場がある。ビックボインはビニール袋に水を詰めて、それをワイヤーに通して、予めいくつか空中にぶら下げておいたんや。それを下に落下させる反動で上に登ったんやろな」


 怪盗ビックボインの身体能力の高さを考えれば、屋根に手が届きさえすれば、簡単に登れます。


「水は床に溢れて時間が立てば消えるし、ビニール袋は今頃ゴミ処理場やろな」


 なるほど、事後処理も完璧であると。

 ですが、これで。


「ふふふっ、捉えたで怪盗ビックボイン」


 後日。

 新聞の一面には、怪盗ビックボイン逮捕––––ではなく、怪盗ビックボインに抱き付き、宙を舞うしーちゃんの写真が掲載されておりました。


「またやられてもうた! しかも違う方法で! くそ、何が怪盗ビックボインや、柔らかすぎやろ!」


 しーちゃんはビックボインの胸を揉んだそうです。

 つまり、今回は本物が飛んでいたと。

 怪盗が同じトリックを二度使うはずもなく、今回は前回を上回るトリックを使い、しーちゃんと一緒に飛んで見せたと。

 完敗ですね。


 はあ、もう暫く貧乏生活は続くみたいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

はんなり探偵の事件簿 赤眼鏡の小説家先生 @ero_shosetukasensei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ