友永有紀子は昭和レトロについて語りたい。

白鷺雨月

第1話 ファミコンとホットケーキと〆はラーメン

 友永有希子は喫茶店カナリアの四人席に一人いた。アイスコーヒーを飲んでいると交際相手の吉野和友がやってきて、向かいに座った。



 もう、遅かったじゃない。まあ仕事だからしかたないっちゃしょうがないけどね。

 えっホットケーキ奢ってくれるの?

 まあじゃあ三十分の遅刻ぐらいおおめにみてあげるわ。

 

 ところでほら見てよこれ。


 ガサガサ……(カバンから何かを取り出す)。


 じゃーんこれ見てよ。このカセットを。ついに私は禁断のブツを手に入れてしまったのよ。そう、前からやってみたかったのよね。このゲーム、あなたの家であそんでもいいかしら。そうです、超難易度として有名なあのスペランカーなのです。いきつけのレトロゲームのお店でみつけたのよね。そうそう、前に吉野君と一緒にいったあのお店よ。けっこう掘り出し物があってよかったわね。

 えっこのゲーム難易度高すぎるって。

 そうね、噂では聞いているわ。でもねそう聞くとチャレンジせずにはいられないのがオタクでゲーマーの宿命と思わない。そう、宿命と書いてさだめと呼ぶように。

 そうそう、このスペランカーをプレイせずにゲーマーは名乗れないわよ。

 何々、スペランカーは難しすぎるからよしたほうがいいって。ふふんっこのゲーマー有希子様をなめないでよ。あの超難関といわれた忍者龍剣伝をクリアした女よ。あの史上最弱といわれた探検家スペランカーを手足のように操ってみせるわよ。

 

 あっありがとうございます。ほらっホットケーキが来たわよ。あなたも半分食べてよね。私ひとりじゃ食べ切れないわ。


 ドボドボ。


 このメイプルシロップをたっぷりかけるのはやめられないわね。

 ほらっあーんして。

 何よ、恥ずかしがって。

 ねえ、美味しいでしょ。私もいただきますわね。

 うーんこの甘さががつんとくるのがたまらいわね。さらにこのバターをまんべんなくぬってね、これはカロリーの怪物だわね。まさにカロニーのレッドアリーマーといっても過言ではないわ。

 そうそう、今夜こそあの宿敵レッドアリーマーを倒すわよ。

 しかし、どうプログラムしたらあんなトリッキーな動きができるのかしらね。

 当時のファミコンであの動きをさせるなんて開発者はまさに神がかっているといってもいいわね。


 どうしてそんなにレトロゲームが好きかって?


 それはね、私の小学生時代にさかのぼるんだけどね。吉野君も知っているでしょう、私のお父さんってとっても厳しくてね。子供のときにゲームやアニメは一切禁止されてたのよね。唯一見れたアニメは世界名作劇場ぐらい。あっあとアニメ三銃士もみれたわね。まあ、かなり厳しくてね。その反動で大人になった今はあのころできなかったゲームやアニメにハマりまくっているのよね。


 ふーホットケーキ美味しかったわね。このカナリアのホットケーキはいつ食べても最高よね。あの生クリームをたっぷりかけたフルーツ盛り盛りのもいいけど、この昔ながらの薄いのもいいわよね。この端がカリカリしているのもいいのよね。冷コーとの相性ぴったりだわ。

 ねえ、あなた知ってた。アイスコーヒーを冷コーって呼ぶの関西だけらしいわよ。あなたのお母さんがコーヒーショップで冷コーっ頼んでてふきだしちゃったわ。しかもあの緑のエプロンを着た店員さんが冷静にアイスコーヒーですねって訂正してて、お腹がよじきれるくらい面白かったわ。私それ以来吉野君のお母さん大好きになっちゃたわ。


 あれこれ何?

 この黒いカセットわ?

 あっ、これって私が前からやりたかった影の伝説じゃないの。

 ふふっん。吉野くんわかってるじゃない。明日は私達休みだし、寝かせないわよ。

 何よ、いい大人なのに顔真っ赤にして。

 寝かせないってのわ徹夜でゲームすることよ。私憧れてたのよね、徹ゲーってやつに。

 

 ごくりごくり。

 ふー冷コーも美味しかった。あまいホットケーキと相性バツグンだわね。

 さて、あなた、晩ごはんにラーメン食べに行くわよ。

 パンケーキ食べたばっかりだって。何いっているのよ、甘いものとラーメンは別腹よ。さあさあ、商店街の出たところに新しくできたラーメン屋さんにいくわよ。醤油ラーメンが美味しいらいしわ。

 じゅるり。

 はーラーメンも楽しみだわね考えただけでお腹が空いてきたわ。

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