検出されない毒
高黄森哉
毒
「やったぞ。遂に完成した」
白衣を着た男は一人、叫んだ。彼の回りには誰もいない。彼は独り言を良くしゃべるたちなのだ。
「これは検出不能な毒だ」
誰に説明するでもなく、解説を始めた。傍から見れば狂人だが、よくよく見るとより、狂人であることがわかる。そもそもそんな変哲な毒を作る男は狂人でなければならない。
「革命だ。これで今日から殺人は簡単になった。誰にも毒を同定できないのだから」
しかし、この毒にはある欠点があった。それは、作り方が難しいという点だ。恐らく、世界中で彼以外に制作できるものはいないだろう。
「明日から、この毒を売ろう。毒は検出されないから、自分が作ったと判る筈はない。だから、堂々と宣伝して、売っても大丈夫なのだ」
この毒は飛ぶように売れた。それから、世界中で心臓発作での不審死が相次いだ。
「警察です」
そんな不自然な死が頻発したある日、警察が彼の下にやってきた。彼は堂々としていられた。白衣の皺を指先でなぞりながら、早く帰ってくれないかな、と考えていた。
「あなたの毒が、人を殺していることはご存じですか」
「いいえ。その証拠はあるんですか」
「はい。あります。心臓発作で死んだ人たちは、明らかに毒殺に関わらず、体内から毒が検出されませんでした。そのような毒は、世界中みても、あなたの作った毒だけです」
彼は手錠をかけられた。
検出されない毒 高黄森哉 @kamikawa2001
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