相談にはいつも乗ってくれるお姉さん

「それじゃあたか君、お姉さんお風呂行ってくるわね」

「は~い」

「一緒に入るかしら?」

「……昨日の忘れました?」

「うふふ、それじゃあねぇ~」


 悪戯っぽく笑い、俺の頬にキスをして真白さんは風呂に向かった。

 真白さんと一緒に風呂に入りたいか? そう問われたら俺は自信を持って頷くよそりゃそうでしょうよ。

 仮に付き合っていなくてもエッチなお姉さんと風呂に入る……それは恥ずかしさをかなぐり捨ててでも実行したいことだ。


「……真白さんとお風呂に入ると絶対……なっちゃうもんなぁ」


 なっちゃう……俺の下半身がフルバーストしてしまうのである。

 これも男の性ではあるのだが、そもそも俺じゃなくても真白さんみたいなお姉さんが素っ裸で隣に居たら……そりゃそうなるんだよ!

 別にそれは恋人関係なのでおかしくはないとしても、流石に連日頑張りすぎると体が疲れてしまうし、真白さんの配信に影響が出てほしくないのも大きい。


「……うん?」


 真白さんが居なくなったので適当にツイッターでエゴサをしていた時だ。

 真白さんのスマホが誰かからの連絡を拾ったものの、この場に居ないのでそれに応答することは出来ないし、俺としても本人から許可をもらってるとはいえやはり勝手に出るのは憚られる。

 ただ、今回はちょっと別というか例外だった。


「……セリーナさん?」


 画面に映っていた文字は【セリーナちゃん】……俺と真白さん共通の知人だった。

 セリーナさんというのは今をときめく話題のVtuberであり、数多くの人気女性Vtuberが名を連ねるVライブのエースの一人だ。

 何かあるのかなと思い、俺は真白さんのスマホを手に取った。


「……よし、許可はもらってるから出よう」


 俺は意を決してタップし、スライドして通話に出るのだった。


「もしもし?」

『もしもし……あれ、たか君?』

「はい俺です。真白さんはお風呂ですよ」

『そうだったんだ……お姉さまはお風呂かぁ』


 セリーナさんのリアルでの名前は知ってるけど、どちらの名前も言うとごっちゃになりそうなのでリアルで会ったりしない限りはセリーナさんと呼ぶことにしている。

 セリーナさん自身も本当の名前よりセリーナという名前の方が最近はもう慣れてしまったようで、本名の由愛よりもVとしての名前で呼んでもらった方が嬉しいみたいだ。


「どうしたんですか?」

『……うん。ちょっと相談したいことがあったんだよね』

「それなら真白さんが出てきたら電話させますけど」

『そう……だね。あぁでも、もし良かったらたか君でも良いの。ちょっと話を聞いてほしいっていうか』

「何かあったんですか?」


 これは……何かあったのかな?

 セリーナさんは大人気のVtuberだからこそアンチは多いけど、どっちかと言えばリスナーとプロレスが上手な人だ。

 ファンもアンチも捌き方が上手で真白さんも見習う部分は多いらしいし、炎上を一度も経験していないくせに炎上ネタでリスナーに揶揄われたりと……本当にセリーナさんは多くのファンに愛されている人なんだ。

 そんな人がこんなにもどこか暗そうな声で助けを求めているかのようで……俺はセリーナさんの言葉に耳を傾けた。


『私の所属してるグループ……Vライブについてなんだけど』

「はい」

『……今、立て続けに問題が起きててさぁ』

「……あ~」


 そういえばと俺はVライブ所属のライバーについて情報を集めていく。

 元々大きい会社であり人気者を数多く生み出しているわけだけど、それと同時に不祥事もそこそこ多いイメージだった。

 特にリアルでの事情が外に漏れたりというのが多く、女性が多いけれどほとんどの理由が異性関係だったりと……まあ大変みたいだ。


「すみません。俺はVライブで興味あるのセリーナさんしか居ないので……今調べたら結構ヤバいっすね」

『嬉しいこと言ってくれるねたか君! まあ……うん。おかげで配信しても不祥事を起こしたあの子をどう思いますかってコメントがあまりにも多くてね』

「やっぱり結構聞いてくるみたいですね」

『関係ない……とは言えないけど、私を含め他の子の配信で出すことじゃないのにうるさいったらないの。ブロックしたらしたで面倒に粘着してくるし』


 セリーナさんの愚痴というか悩みは全く止まらない。

 まるで呼吸を忘れたかのように不満ばかりを口にするセリーナさんだけど、彼女の苦悩が言葉を通じて伝わってくるため俺は口を挟まず最後まで聞いていた。


『……Vライブに所属できた時は凄く嬉しくて、オーディションも極限の緊張の中でやり切ったのに……はぁ、なんでこんなことで悩んでるのかなって』

「セリーナさん……」

『ごめんねたか君。こんなことのために連絡しちゃって……』


 セリーナさん、結構メンタルがヤバそうだな……。

 真白さんはセリーナさんのことが大好きなので、彼女の相談にはよく乗っているしリアルでいつでも会おうと言っているほどだ。

 だからこそセリーナさんも色んな悩みを打ち明けられるし、真白さんのことを頼りにしているんだ。


「俺は……その、気の利いた言葉を伝えることは出来ないです。頑張ってくださいとしか言えないのが本当に申し訳なくて、もどかしいです」

『そんなことないよ。こうして話を聞いてくれて嬉しかったし、やっぱりたか君の声を聴くと話をして良かったって思うから』


 そう言ってくれるのなら全然良かったですよ、そう伝えるとセリーナさんはまた笑ってくれるのだった。

 確かに悩みはまだまだ残っているみたいだけど、後は俺も頼りにしている真白さんに任せるべきかな。

 その後、真白さんが戻るまで俺はセリーナさんと雑談を楽しみ……そして、真白さんが戻ってきてからは色々と話が進んだ。


『転生……ううん、キャラの権利を買ったらそのまま使えるかな……』


 ちょっとばかし、重たい話になってきたぞ……っ。

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一緒の部屋に住むお姉さんがエッチすぎる件 みょん @tsukasa1992

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