第二部 盗賊と絶望

 「それで? ファイヤーがやられて、何も盗れずに、おめおめ逃げて来ただと?」


 ここは、エレノアの馬車を襲い、シロ達が退けた、盗賊団のアジト。

その中でも1番大きな家の中だ。

今、声を発したボスらしき人物の前には、先の戦闘で逃げてきた、盗賊達か跪いている。


 「い、いえ俺達は、ボスに報告をと…」

「そうです。あと一歩の所で邪魔が入りやして」

「あの、変な奴等が、乱入してこなければ…」

自分達は、逃げた訳では無いと、ボスに言い訳を続ける、盗賊達だが・・・

「やかましい!!」

「「「!?」」」

ボスの一喝で、震え、黙るしかなかった。


 「まぁ良い。それで? ファイヤーの魔法を防いだ白髪の野郎は、もう商人達と、一緒じゃね〜んだな?」

「へ、へい! 街で別れたのを、確かにこの目で確認致しやした!」


 どうやら戦闘後、シロ達は、街までつけられていたようだ。


 「そうか。どうやって魔法を防いだのかは気にはなるが、まぁ良い。野郎共! 俺は、舐められたままなのは、性に合わねぇ!」

「「「ヒャッハー!」」」

「白髪の野郎がいないのなら、今がチャンスだろう。よし! お前!」

「ヘイ!」


 跪いている1人に、近づき声をかけるボス

「挽回の、チャンスをやろう?」

「お、俺ッスか?」

「あぁ」

嬉しそうに、立ち上がろうとする、盗賊


 シュン!!


 「え? ギャ~〜〜〜!!!!」

一閃! 立ち上がろうとした盗賊の右腕は、ボスの剣により、切り落とされていた!


 「イテェ、イテェよ〜! ボ、ボス! どうして? 俺の、俺の腕が」

床に転がり、痛みと疑問を訴える盗賊。

「今ならまだ、馬車に先回り出来るだろう。コイツを街道に捨てて、待ち伏せて来い! お人好しの商人様だ。必ず馬車を止めやがるぜ」

「どうじてだよぉ〜! ボス! 挽回のチャンスを…」

「あぁ。くれてやるとも。死に損ないの、囮役でな」

「あぁァァァ」

血だらけになりながら、他の盗賊によって、乱暴に引きずられて行く、腕のない盗賊。


 「さて、残りのお前らだが…」

ボスが跪いている、残りの盗賊を見回す。

盗賊達は、返り血を浴び、震え、漏らす者までいた。

「ひ、ふ、み、… 5人か? ならいらねぇな? 補充はきく。見せしめだ!」


 ボスの家の中から、しばらくの間、叫び声が聞こえた後。血だらけのボスが出て来た。5つの生首を蹴り飛ばしながら。


 「野郎共!! 俺も出る! 略奪だ〜!!」

「「「「「ヒャッハー!!」」」」」


 ボスの恐怖に支配された、数多の盗賊達が、馬に乗り向かう。エレノア達の馬車へと・・・


 ・・・数日後・・・


 「シロ〜! おはよ〜♪」

「ぐっふ! おはよぅ。クロ」

エレノア達と辿り着いた街。アイン街の宿屋で、シロはクロのベッドダイブで目を覚ました。


 「朝から元気だね? クロ」

「うん! 早く、朝ご飯食べに行こ?」

アイン街で、シロ達は王都で出来なかった、旅の準備をしつつ、少しの間休んでいた。


 でも良いのかな? こんなにのんびりしていて。僕の暗殺の件もあるし、早くクロの行きたい場所に向かいつつ、もっと王都から離れないと…


 「どうしたの? シロ?」

笑顔で振り向く、クロ。

「ううん。なんでもないよ?」

いや、クロはまだ幼いし、娼館から脱出してから、ずっと野宿だったんだ。もう少しぐらい良いだろう。


 少し考えつつも、クロと共に宿屋の食堂に向かうシロ。


 だが・・・


 「大変だよ! シロちゃん! クロちゃん!」

「「?!」」

食堂に入ると、宿屋の女将さんが、血相を変えて2人に話しかけて来た。


 「ルージュ商会の馬車が、盗賊団に襲われたって! あんた達、ルージュ商会の馬車でこの街に来たんだろう?」


 ・・・何・・・だと?


 「今朝方に、何人かが、この街の治療院にも運び込まれたらしいよ」

「治療院ですね? ありがとうございます!」

「あ! 待って! シロ」


 居ても立っても居られず、治療院に向けて走り出しす僕。後ろからクロがついて来ている気がするが、今はかまっている余裕は無い。


 「そんな、どうして? 確かに大きな盗賊団とは、聞いていたけど、こんなに早く、また襲われるなんて!」

「シロ〜! シロ~!」


 息を切らせつつ、治療院に辿り着いた僕達は、そのまま中に入っていた。


 「…なんだよ…これ…」

「…みんな…」


 絶句。治療院の床には、黒焦げの死者が多数寝かされていた。焦げていない部位も、斬り刻まれた、跡が見える。

「魔法? なのか?」

辛うじて、残っている服の切れ端で、エレノアさんの護衛の人達だと、分かった。


 「あ、あんた! ルージュ商会の人かい?」

医師らしき人物と、街の衛兵らしき人物が近づいてくる。

「え?! あ、はい」

そうだ。今の僕の服は、エレノアさんに貰った、護衛さん達と同じ服だ。


 「いや~酷いもんだね。残念だが、ここに運ばれて来た時点で、全員、死んでいたよ」

「魔法使いの居る盗賊団か。厄介だな」


 全員死んでる?


 「エレノアさん! エレノアさんは?」

「エレノア? あぁ商会の代表代理か。残念だがここには運ばれていないよ」

「どうして?!」

「周辺は俺達、衛兵が探したが、見つからなかった。恐らくは連れ去られたんだろう」

「代表代理は、綺麗な女性だと聞いている。可哀想に…」

「捜索隊や対盗賊への部隊を組んではいるが、奴ら、崖を後ろにアジトを構えていて、当然正面はワナだらけ。中々襲撃出来んのだ」


 連れ去られた? エレノアさんが?

捜索隊も絶望的だと?


 「シロ」

僕を見上げて、不安そうなクロ。


 …そうだよな。

クロは、エレノアさんとずっと仲良くしてたもんな。それに僕だって、エレノアさんや護衛の皆に、本当に良くしてもらった。この世界に来て初めて、僕が助けて、助けられた人達だ!


 「大丈夫だよ。クロ」


 そう言って、クロの頭を撫でた僕は、衛兵さんに、話しかけた。

「すいません。馬を1頭と、ロープをお借りできませんか?」

「?! お前! まさか助けに行くつもりか? 無理だと行っただろう?」

「大丈夫です。崖の後ろから潜入する方法があります」

「本当か! だが相手は大勢だ。無駄死にになるぞ?」

「エレノアさんを探して来るだけです。盗賊達と戦いはしません。どうかお願いします」

「う〜ん。仕方ない、良いだろう。馬とロープを貸そう」


 深々と頭を下げた僕に、衛兵さんは迷いながらも、貸してくれるみたいだ。

「ありがとうございます!」

「ただし! くれぐれも無茶をするなよ? 俺達も時間は掛かるが、必ず正面からアジトに向かう!」

「はい! じゃあクロ、クロは宿屋で…」

「イヤ! 私も行く!」

ですよね~

「良いけど、クロ? 絶対に僕の側を離れないでね?」

「うん!」


 こうして僕達は、エレノアさんを探しに、盗賊団のアジトに向かうのであった。


 また、僕は落ちる。


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【一軍俺様の落ちて、上がって、落ちてetc.】クラスの一軍だったけど無職と、ハズレスキルで転落しました。 どっちつかず @o1g9u3

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