第二部 旅と別れ

 山賊達との戦闘後、護衛達を手伝って、

ケガ人を介抱している僕。すると女性が話しかけて来た。


 「助けて頂き、本当にありがとうございました。 私はエレノア・ルージュ。ルージュ商会の代表代理をしております。あなた達は?」

 

 艷やかに光る金髪をアップにし、動きやすそうな格好をしていが、キレイな身なりだ。なるほど。貴族だと思っていたが、商会の娘なのかな?

しかし、本当の事を言うと、ややこしい事になるな。なら、ここは・・・


 「僕は、シロ。この子はクロ。兄妹で旅をしているんだ」

「お兄様!」


 クロが変なスイッチが入って、こちらを見上げて、抱きついて来るが、今はそのままにしておこう。


 「ご兄妹で旅を。シロさん。クロさん。まだお若いのに大変ですね。これから何処へ

向かう予定なのですか?」


 転移者だとバレてない? どうやら僕への暗殺命令等は、王家の極秘らしい。王都で

指名手配されている訳では、ないみたいだ。


 「ひと先ずは、この近くにある街に、向かう予定です」

「そうなのですね! なら私達と、一緒に行っては下さいませんか?」


 ん!?


 「「お嬢様!?」」

「私達も王都から、その街に商品を持っていく所なのです。もちろん、護衛代としてお金は払わせて頂きます。」

「また、山賊達が襲ってくると?」

「はい。あの山賊。いえ、盗賊団は最近よく噂を聞く盗賊団と思われます。規模も大きく、先程の様に魔法使いがいますと…」


 自分達も、商品も守りきれないか…


 「どうするクロ?」

「私、馬車乗ってみたい! それに、もっとエレノアさんと、お話したい!」

「まぁ!?」


 嬉しそうに、笑い合う二人。クロも懐いているみたいだし、うん。決まりだな。


 「わかりました。エレノアさん。こちら

こそ宜しくお願いします。」

「ありがとうございます! さぁ、負傷者を荷台に乗せたら行きますよ!」

「「かしこまりまりました。お嬢様!」」

「クロちゃんは、こちらに」

「うん!」


 仲良く馬車に馬車に入っていく二人。さて僕も… ガシ!! うん?


 「よう。シロとやら」

肩を掴まれた僕が振り返ると、そこには笑顔を向けてくる、護衛の皆さんが。

「助けてくれて、ありがとな!」

「楽しく、俺達とお話しようぜ?」

「幸いにも、負傷者の関係で、馬はあるからな?」


 な!?


 「いや〜でも、妹の側を離れるわけには」

「大丈夫さ! お嬢様は、お優しい方だ」

「そう! まるで天使のような!」

「そんな天使に、どこの馬の骨とも分からない男は、近づけさせぬ!」


 コイツら、目が笑ってねぇ。護衛と言うよりは、エレノア親衛隊か?

最後少し、本音漏らしていた、奴もいたしな。


 あれよあれよと、馬車から引き離された僕は、馬に乗せられて、そのまま進む事に。


 やってて良かった、馬術ってな。

そう簡単に、楽はさせてもらえないか…


 数日後・・・


 「シロさん、クロちゃん。街まで、本当にありがとうございました。」


 あれから数日。エレノアさんと共に、旅を続けた僕達は、無事に街まで辿り着いた。

僕達は、この街で旅の支度をするために、

次の街へ向かう、エレノアさん達とは、この街でお別れだ。


 「うんうん。エレノアさんと沢山お話出来たし、馬車も初めてで、すっごい楽しかった!」

「僕達も、徒歩よりも早く街に着いたし、何よりも…」


 そう言って、僕は自分とクロの格好を見る。僕とクロはボロボロの格好から、新しい服に着替えていた。


 クロは、白色のワンピースに旅用の皮のブーツ。ワンピースの上から、少し大きめな、白色のフード付きコートを着ている。


 僕は、護衛の人達とお揃いの、動きやすい黒色の軍服かな? 少し丈が長く、西洋の

ファンタジーでよく見るような服だ。


 「本当に良いんですか? 服まで頂いた上に、護衛代でお金まで頂いて?」

「良いのですよ。あれから襲撃が無かったとはいえ、護衛代はお支払する約束でしたし。服も私のお下がりと、護衛達の予備ですから、是非お礼として受け取って下さい」


 そう言うと、エレノアさんはクロの前でしゃがみ込んだ。

「クロちゃんは、せっかく可愛いのですから、お洒落もしないとですしね♪」

「わ〜い! シロ! 私キレイ?」

「あぁ。その聞き方は少し怖いが、クロは可愛いよ」

「それに、このフードを被れば顔の傷を隠せます。これで街中でも、目立たないはずです」

「うん!」

「本当に、感謝します。」

「それはそれとして、シロさんはコチラに。クロちゃんは、少し待っていてね」

「うん!?」

「は〜い!」


 僕を馬車の物陰へと、連れてくるエレノアさん。

「先程は、ああ言いましたが、元々の服だと目立つでしょ? お二人は兄妹では、なさそうですし」

「!? バレていましたか?」

「えぇ。お二人は本当に仲がよろしいみたいですが、少し訳ありの様な気がしまして」


 さすが商会の代表代理か、まぁ気づかれるよな。


 「そうですね。旅をしているのは、本当ですが、兄妹ではありません。少し王都に居づらい理由もあります」

「フフフ♪ そうでしょうね。ボロボロで傷だらけの青年と少女の二人旅。正直バレバレでしたよ?」

「アハハ…」


 楽しそうに笑うエレノアさんと、苦笑い

する僕。


 「あえて、理由は訪ねません。本当に、

お二人は良い人みたいですからね」

「ありがとうございます」


 頭を下げる僕。


 「いえいえ。それとシロさんにはコチラを」

「これは? 剣?」


 それは黒い鞘に収まった、細身の西洋剣だった。


 「ですが、僕は力があまり…」

「護衛達から、シロさはあまり力が強くないと伺っています。ですが、これからクロちゃんを守っていくためにも、必要だと思いますよ?」


 剣か、果たして今の僕に使えるのだろうか? 【剣聖】には吹き飛ばされたしな。

でも、これからクロや、人を助ける時にスキルだけじゃ、限界が来るかも知れない。


 「わかりました! 大切に使わせて頂きます」

「はい。これからもクロちゃんを、守ってあげて下さいね」

「はい!」


 ・・・


 「エレノアさん! バイバーイ! またね!」

「はい! クロちゃん! シロさんも、またお会いしましょう!」

「エレノアさん! 本当にありがとう! お気をつけて!」


 こうして、僕達は新しい街に無事来る

事が、出来たのであった。


 僕の人生は、まだ平行のはずだった…

 

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