幸せの泡
ひまさん
幸せの泡
ある所に、A君とB君という2人の男の子がいました。
2人の薬指にはきらりと輝くお揃いの銀色が着いています。
彼ら関係を1言で表すなら『こいびと』というものでした。
2人は心の底から相手を愛し合い、想いあっていました。
それなのに、周りの人々は意地悪なことばかり云うのです。
「男同士……?ないわー」
「女の方が魅力的じゃん?なんでそんなやつ好きなの?」
「きも……」
2人はとても悲しんでいました。
2人は相手が大好きなのに。それなのに、こんな酷い言われようです。
B君の目には涙が滲んでしまいました。
そこでA君は思いました。
「俺とB君以外要らない。みんな死んじゃえ」と。
その思いからA君は気付きました。
そうだ、僕たちが2人だけの世界に行けばいいんだと。
そして、A君はB君に問いかけます。
「ねぇB君。」
「どうしたのA君。」
「俺たちさ__」
B君は大きく目を開けました。
きっと、驚いてしまったのですね。
「…勿論いいよ。君が行くなら僕は何処へでもついていくから。」
にこ、と擬音がつくような満面の笑みでB君はそういったのです。
そうと決まれば話は早く、2人は車で海に行くことにしました。
普通のドライブも、2人でいればとっても楽しい永遠の思い出です。
潮風にあたりながら、今度はB君がA君に問いかけます。
「ねぇA君。」
「どうしたのB君。」
「僕がいる地獄と僕が居ない天国。君はどっちに行きたい?」
A君は何も迷わず、はっきりと答えます。
「勿論。君がいる地獄に決まってる。」
A君はお揃いの銀色を撫でながら、優しい笑みを浮かべていました。
2人は辿り着くことの無い地平線へ向かってどんどん、どんどんと歩いていきます。
足首、太腿、お腹、肩と次第に体が水に飲み込まれていきます。
やがて頭がどぽんと浸かり意識が薄れていきます。
2人は同時に絡めていた指をより一層の強く握り締め言いました。
「愛してる。」
そんなふたりの言葉は海の泡となり、2人は幸せそうに笑ったそうです。
めでたしめでたし。
幸せの泡 ひまさん @Hima-1030
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