不視の病

花野井あす

不視の病

パンダのルンルンは注目を浴びるために生まれました。


知っている人、知らない人。

ルンルンは誰からも愛されます。


笑顔を向けられると、ルンルンは笑顔になります。

呆れ顔を向けても、ルンルンは笑顔になります。


何でもいいのです。

ルンルンは自分が見られているわかっていれば、嬉しいのです。


しかし人というものは変化の無いものに物足りなさを覚えるというものです。

次第にお客さんたちが目を向けなくなると、

ルンルンは薄れ始めます。


ルンルンは何とか目を引こうとします。

ぼくはここだよ、ぼくはここにいるよ。


ルンルンはわあわあ泣き喚きます。

ぼくを無視しないで、ぼくはここだよ


ルンルンは喚き散らします。

こっち向いて、ぼくを殺すきかい。このひと殺し!


あまりの声の大きさに、通り掛かったお客さんたちが振り返ります。

眉をしかめて、ひそひそと耳打ちしあっています。

奇異の目を向けて、言葉を失っているひともいます。


ルンルンは満足しました。

これでぼくは大丈夫。


ルンルンは今日も、注意を引きます。

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不視の病 花野井あす @asu_hana

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