第四十四話 上と探索スキル
「あ、スキルがリジェクトされました」
「え? リジェクト、ですか?」
俺の結果報告に、茜さんが不思議そうな声を出す。
「はい。また試してみますね。次は探索系スキルツリーのラストスキルで、カンストさせている奴で──スキル『深淵を覗き込む瞳』……あ、やっぱり。リジェクトされますね」
俺は顎に手を当てて考え込む。
──リジェクトされるのって、そういや久しぶりだな。三千年お休み部屋ではたまにあったけど……うん? てことは、この上はダンジョンの範囲外ってことか? だとするといったいどこに繋がってる……?
「八郎さん! 八郎さん!」
「うわっ。あれ、茜さん、どうしました?」
「どうしましたじゃないですよー。配信コメントがすごいことになってますよ!」
「え、あ……すいません。すっかりぼーとしてました」
'さすがキムキムだな'
'一層とはいえぼーとできるのすごいな'
'いやいやいや! それよりなんだよ、深淵を覗き込む瞳って。聞いたことないぞ!'
'探索系スキルの最後は全域探索じゃないのか?'
'いや、そのはずだぞ'
'それより、リジェクトされたってなんだ?'
'リジェクトってことはあれだろ?拒絶するとか、却下するとか'
'そもそもスキルってリジェクトされるのか?'
'え、誰かにリジェクトされたってこと? スキルが?'
確かにコメントがすごいことになっていた。
「あ、茜さん、これってもしかして……」
そして甦る、記憶。
俺のその発言がフラグだったかのように、茜さんのスマホが鳴る。とても記憶に残る、その音楽。
ビクッと肩を震わせる茜さん。
こちらにすがるような視線を送ってくる茜さんに、俺は思わず手を差し出してしまう。責任は、俺にあるのだ。ここは俺が電話に出るべきだろう。
茜さんが、俺の手を見てぱあっと一気に顔を明るくする。そして、通話ボタンを押したスマホを、とても申し訳無さそうに手渡してくる。
「──はい、もしもし。木村八郎です」
大きく深呼吸して、気合いを新たに話し始める。
スマホの通話の相手は、言うまでもなく、モモちゃんだった。
しっかり俺たちの配信を確認していたのだろう。
俺はそのまま、電話越しにモモちゃんに説明しようとするが、バッサリと止められる。
「八郎さん、先に配信を」
「あ、はい。すいません……」
そんな俺の視線の先では、俺にスマホを渡したお詫びにとばかりに茜さんが撮影用ドローンに向かって、配信を終了する旨を告げてくれていたのだった。
【三千年お休みトラップ】を踏んだダンジョン探索者~気づいたら世間はすっかりネット社会でした。暇潰しでカンストさせたスキルでモンスターを轢き殺したらダンジョン配信に映り込んでバズった?どういうこと? 御手々ぽんた@辺境の錬金術師コミック発売 @ponpontaa
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