母親と掲示板

昨日は、お母さんの恋人が帰ったら風呂に入り、ご飯を食べたり。

それから、ベットに寝転がりながら、美亜と書かれている写真フォルダを開いて写真一枚一枚を見ながらスクロールする。

美亜の笑ってる表情をした写真や談笑している動画、映画で感動して涙が止まらずに困ってる表情を携帯で見ながら、私はゆっくりと瞳を閉じたり



朝目覚めると、母親は出かけていて、家にはいなかった。

適当に朝ご飯を済ませ、身だしなみを整えた後、リビングの机に置いてあるお金を財布に入れて家を出た。


私の家は母子家庭で両親は離婚しており父親はいない

最後に会ったのは、玄関前だった

朝の早い時間に目が覚めるとお父さんは、バックに何かを詰めている瞬間だった。


「お父さんどこ行くの?」

父は私の声に少し驚いた表情を見せたが、直ぐに表情を柔らかい笑みに変えた。


「ちょっと買い物だよ」

「買い物?私も行きたい!」と言えばどういった表情をしただろう?

だけどその時の私は「...うん」と答えただけでそれ以外は何も言わなかった

私も何かを察していたのだと思う。




「大丈夫?」

「はあ疲れた...外暑すぎ、体育しんどいんだけど」

4時間目の体育は、ずっと走っていた

学校の周りを6周

全力で帰りたいと思った

「あおい、体力無さすぎじゃね?」

「いやいや、6周もしてピンピンとしてるあんたらがおかしいよ」

「そうか?」と言って不思議そうにみかを見て、みかも照れくさそうに細見を見た


私はその光景を見て、少し不機嫌な気持ちになった

 

5時間目、6時間目の授業が終わり部活はしてないのでそのまま帰宅

特に予定もなく、約束もしてないので今日はそのまま帰宅した

また、放課後ゲームセンターに行ってもよかった..だけど、嫉妬の感情に任せて、細見に、酷い言葉を言いそうだった

だから今日はそのまま帰宅する


玄関扉に鍵を挿し込んで回すと、開かなかった

あれっ?と思いもう一度回すと扉は開いた


お母さん帰ってたんだ?

最初は、泥棒かと思い身構えたが、玄関に高そうなハイヒールが無蔵座に並べてあったので少し安心した



「ただいまーお母さん今日は早いね」

母は、リビングの椅子に突っ伏すように身体を預け、酒を煽るように飲んでいた

見えただけでもビール缶が7缶

「ああ..おかえり」そう言いながらぷしゅっと缶ビールを開けて口に付けた

「お母さん、今日ご飯はどうするの?」

「食べてない、今日はあおいの好きなおろし天丼よ」

母は、机の上にある白いビニール袋から、あのお店のロゴの入ったお弁当を取り出した

「それ私の好きなお弁当じゃないんだけど」

「えっ?そうだっけ」

「私が好きなのは、野菜炒めスペシャルおかず弁当なんだけど...」

「あ...そうなんだ。ごめんね」

母は、何かを隠すように、にへらっと笑顔を作った

「いいよ。これも好きだから」

私は、そう言って手を洗って母の対面に座った


お弁当を取り出すとまだ熱を持っており暖かった

箸でえび天をとりながら、何気なく聞いてみる


「昨日の人はどうしたの?」 

「別れた。」

「...そう。」

そこで会話は止まり、私がお弁当を食べ終わるタイミングを見越したかのように母は、口を開いた

「彼...男の人が好きなんだって...」

母の話した言葉に、一瞬脳がフリーズする

「そ、そうなんだ...」

「お母さんね。頑張ったのよ」

母は、ビール缶を片手でゆらゆらと揺らして話をした

昨日会った男の人は、月野竜馬

会社の後輩で、歳は32歳独身の完全フリーらしい


余談だが私の母(椎井真希)は、私を19歳の時に出産して、今年は34歳だ


「この人なら!」と思ったらしく、アタックを結構したのが4ヶ月前

食事に誘ったり、遊びに誘ったり、大人の遊びにも誘ったそうだ。


そんな親の爛れた話を聞きたくない。

私は、そう思いながらも聞くしかないので、適当に相槌を打ちながら話を聞いた


母の愚痴に対しても、嫌そうな顔をしない

昨日は思いきって家に誘って、私を紹介しようとしていたらしい


それは分かっていたけど。


私が、二階の自室に向かった後、帰り道で思いきって告白すると、返事は「すみません、俺男が好きなんですよ」と言われたそうだ


普通に振られるより、ダメージは大きかったみたい

それから母は、いつものように愚痴を溢し、お酒を飲み、吐露して、またお酒を飲んだ


母は酔ってきたみたいで顔が赤い

うつらうつらとしたあと、机に突っ伏した

「同性を好きになるってどうな気持ちなのかな?」

母の何気ない言葉は、私の心を酷く動揺させた

どんな気持ち。分からない

私は、いつの間にを好きになっていたし


「私達が男の人を好きになるのと一緒なんじゃない?」

「てことは、私が男だったら彼は私を好きになったのかな」

「そうなんじゃない?」

「....」

そんな訳ないが、そう思いたいのがお母さんの心情なのだろう。


それから、沈黙が続いた。

眠っているのだろうか?

机に突っ伏したまま一言も話さない

私は気まずくなり、お風呂に入るために席を立つ

すると、突然一言だけ呟いた

「ごめんね、また駄目だった」


お母さんはよく彼氏を作り別れを繰り返している

妄執に囚われたかのように、何度も別れているせいか私も気にせずにお母さんの別れ話を聞いてきた


別れ話を聞き終わると最後には「ごめんね。」と言う

何に対してのごめんね。なのか

誰に対してのごめんね。なのか分からない


酷く辛そうで吐き出すように呟いた言葉は、私を憂鬱とさせた


私は、無言でゆっくりとリビングの扉を閉めて、お風呂に入る

浴槽にはお湯が貼られていたので、お母さんが洗ってくれていたのだろう


体を洗いながら母の言葉を反芻する

「私が男だったら彼は私を好きになっていたのかな」


私が男だったら

美亜は私を...好きなってくれたかな?


私は、首を下げ自分の身体を見る

そして昔の彼氏の身体を思い出した

肩幅の広い骨格に大きな力瘤それと筋肉質な身体


「男だったら、好きになってくれたかな...いやないね」


どうしても言葉には出せない私の思い

私が、カミングアウトしたらお母さんは、どんな反応をするかな?


ふと気になったので部屋に戻り携帯で調べる

(LGBT カミングアウト 反応)検索

スマホの画面一番上にこう書かれていた


【LGBT】カミングアウトされた親または友人の反応集 掲示板


そのサイトは、レズ、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの人達の憩いの場みたいものだった


タップすると、私はこうだったとか、俺はこうだったという反応がいくつかあった


20代前半 女性

俺は食事中に日常的な会話をしながらカミングアウトしました。

結果は、両親には理解しては貰えなかった

それから関係がぎくしゃくとしたが、5年問という長い時間をかけて少しずつだが関係が緩和されていきました。


10代後半 男性

7年以上付き合いのある友人に思いきって好意を伝えた

振られたけどスッキリした

振られたときに言われたのが「えっそうなんだ。でもごめん俺、女が好きなんだ」と笑いながら言っていた

うすうす男が好きなのは気づいてたみたいだった


こんな感じに、振られた人、嫌われた人、成功した人、長い時間をかけて関係が修復した人


私は、このネット掲示板を見て、少し決心が付いた


私もいつかは親に打ち明けよう

いつかだけど...


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恋をしたら病気と読む @apricotto

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