気持ち悪い


椎井葵しいいなあおい渡辺美亜わたべみあが好きだ。

まあ、言ってしまえば私はレズビアンだ。と思う

別に最初からレズビアンだった訳では無い

最初はLGBTの人達を忌避していたし、高校1年生までは彼氏だっていた。


だけど小学1年生から友人だった渡辺美亜に私は恋をした

きっかけはとても単純な事だった

中学2年生の頃に彼女の顔をまじまじと見つめて


私は『意識』した。


意識をすると、後は簡単だった

ブレーキの壊れた車のように止まることができずに私は渡辺美亜を好きになっていた。


彼女の横に並びいつもより距離を詰めて

肩が当たりそうな程近づいて、トンと肩が当たった。

そのちょっとの触れ合いが私は嬉しかった

美亜は「ちょっとどうしたの?」と困った顔で言って私から少し距離をとった

距離をとられたけど、「寒いから」と言い訳をして私はまた彼女に近づいた



「ちょっと葵、私レズじゃないんだけど..」

「私も違うよ。私彼氏いるし」

「何それ嫌味?」

そう言って美亜は苦笑する


そんな感じに私は彼氏にも母にも友人にも、そして自分自身にも嘘を付き続けた


それから中学校を卒業して高校は美亜と一緒の所を選んで受験した

美亜の選んだ高校は、私が志望予定の高校より偏差値が高かったけど、必死に勉強して見事合格した


高校に入ってから彼氏とは段々と疎遠になって今では連絡すら取っていない




「ちょっと聞いてるの?葵?ねえ?」


彼女の柔らかそうな唇から漏れ出る吐息と私の名前


そのふわっとした声でもっと私に声を掛けてほしい

その瞳で私だけを見ていてほしい

もっと...もっと私の事だけを...


「どうしたんだ?椎井?」

私が妄想に耽っていると、視界の端から私の顔を覗き込んできた


「なに、邪魔しないで」

私は不機嫌さを隠そうとせずに言った

「な、何だよ。なあ、わたべ俺なんかした?」

「細見くんは何もしてないよ」

そう言って渡部は、ペットを叱るような撫で方で椎井の頭をごわごわと撫でた

何その撫で方...まあ嬉しいんだけど...


「ねえ...細見くん今日遊び行こうよ!」

突然バッ!と立ち上がり渡部は言った

「えっ...椎井が行くならいいよ」

そう言って細見は、チラッと私も見る

はっ?いやいやなんで私?

「行くなら美亜と二人がいいんだけど」

「いやいや、そこは3人で行こうよねっ?」

「そうだよ椎井3人で行こうや!」


そういうことで私と美亜と細見の3人で放課後遊びに行くことになった。

須磨駅に向かいそこから兵庫駅に向かった

「細見くん今日何処に行こっか」

そう言って渡部は、細見の横顔を見た

渡部に、見られてる細見を睨んでおく


あ〜〜また嫉妬した

気持ち悪いな私

「そうだな〜〜ゲーセンいかね?」

「いいね!いこー」


ゲームセンターってことはUFOキャッチャーもするよね だったら渡部にアライグマのぬいぐるみを取ってあげよう

そして「ありがとうあおい!」と言われたい


「なあ、椎井って中学からこんな感じなのか?」

さっき思いついたと言った声で細見が聞いてきた

「どういうこと?」

「何かレズっぽくないか?」


うるさいよ。お前にレズなんて言われたくない


「ん〜〜...そうかな?いつもこんな感じじゃない?それにあおいって中学3年生まで彼氏居たんだよ」

「彼氏いたの?知らんかったわ」

「そうだよ。私彼氏居たからだからレズなわけないじゃん」

今日も私は嘘を付いた




「ただいま〜〜〜」

「おかえりあおい。今日は遅かったじゃない」

玄関扉を開けると見たことないビジネスシューズが、壁際に綺麗に並べて置かれていた

「これ誰の?」

成人男性の話し声と相槌を打って楽しく話すお母さんの声が聞こえる


ああ..."また"見つかったんだ...


私は細い廊下を忍び足で歩いて邪魔しないように2階にある自分の部屋に向かおうとした

「あおいちょっとこっちいらっしゃい」


さいあく、またつきあわされるの?いやだ、行きたくない

心の中で悪態を付いて....付いて....付いて...返事をした

「はーい」

母親と私の知らない男のいる部屋


早く帰ってほしい。


という願いを込めながらゆっくりとした足取りで部屋に向かった


リビングの扉を開けると、いつもよりも丁寧なメイクに、美容室で整えてきたであろう柔らかそうな髪

そして、自分の魅力を引き立てる為の服


男の方は至って普通で、スーツをピシッと着こなしてる感じだ


お母さんより、若干年下かな?


「この娘はあおい、っていうの。私の自慢の娘なのよ」

そう言って母は、嬉しそうに私を紹介する

「初めましてこんばんは、椎井葵と言います」

「こんばんは、月野竜馬と言います。椎井さんの言った通り、とてもしっかりとした娘さんですね」


椎井さん?、お母さんの彼氏じゃないの?

この人は、私のお母さんはどういった関係?

服装は、何でスーツ?

仕事帰り?


「葵、彼は私がお付き合いしてる人なの」

彼氏...ああやっぱり

(今回)で何人目だろ?5人?8人かな?


どうでもいい


「お母さん宿題しないといけないから部屋に戻ってるね。月野さんゆっくりしていってください」


私は、リビングの扉を開けて二階の部屋に向かい、ベッドに飛び込んだ

そしてバッグに入っているスマホを取り出して、画像ファイルフォルダを選択そして(宝物)というファイル名を選択した


そこには、渡辺美亜の写真や動画が大量に入っていた

横顔から、笑った顔、二人で写った写真

231枚の写真と23本の動画


私って気持ち悪いな...

病気みたい

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