梅雨の憂鬱

久石あまね

第1話 梅雨の憂鬱

 いつまでも同じことを際限なく考える。考えても考えても答えは出ないのに。

 

 職場の複雑な人間関係について考えても全く価値を見出だせないのに。

 

 停滞している自分の人生に今、劇薬を投入したい。


 逆転サヨナラホームラン。


 そんなことは実際には起こらない。


 地道にコツコツと積み上げていくのが真っ当だろう。


 しかし自分はそれをするのが一番不得意だ。


 街中の横断歩道を渡るとき、歩いて渡っている途中で僕が立ち止まったら、どれほどみんなに迷惑をかけるか。でも僕は横断歩道の途中で立ち止まってしまいたいと思った。


 きっとみんなから注目されたいのだろう。承認欲求の塊じゃないか。


 みんなからチヤホヤされて、「大丈夫?」と労られたいと心の底で悪巧みしている。


 ある日、喫茶店に入り、自己啓発書を読んでいた。


 「世界はシンプルです。世界を複雑化しているのは、あなたの心です」


 ズッキューン、シュパババ、ズッキューン。


 「あんた、頭おかしなったんか?」


 心の友、二階堂あまねが僕にツッコミました。

 

 心のイマジナリーフレンド二階堂あまねは、いつも久石あまねを正しい道に導く存在です。


 そうです。


 世界を複雑化しているのは、あなたの心です。


 僕は喫茶店を出て、OLを観察しながら、ビジネス街を徘徊して思った。


 ポニテールのOL。


 茶髪ノースリーブ。黒髪スーツ。


 一目惚れしてしまうやろ。


 人生の劇薬は「恋」なんじゃないかと、僕は悟った。


 

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梅雨の憂鬱 久石あまね @amane11

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