私からは絶対、言ってあげない!

第1話

こっち見て。いつもアピールするけれど。見てもくれない! 信じらんない!!


  君のは蒼く清んで夏の空。まぶしすぎるよ、俺にとっては。


ひと月も、ふた月後でも会話なく、おはようさえも交わすことなく。


  梅雨が来て真白いシャツにドギマギは、知らない気持ちに戸惑うばかり。


雨の日も早起きしては気合い入れ、髪のセットは、もう! 誰のため?!


  ブロンドの髪がふわりと風に揺れ。天使の梯子はしご。ため息もれて。


放課後のおしゃべり楽し時が過ぎ。気付けば雨も小降りになって。


  珍しく放課後遅く調べもの。雨がやむまで待っていたなら。


バイバイと友と別れて教室へ。となりの席にカバンが一つ。


  雨音がこもる教室戻ったら、俺のカバンは席にはなくて。


待ちぼうけ。不安が声をあらげちゃう。いいの! だって、君が悪いから!!


  驚いた……。思わず「ごめん」言ったけど、何故か悪い気しなくて笑う。


卑怯よね! 変わらなかった、そのえくぼ。悔しい! けれど、私の負けね。


  「帰ろうよ」何故か誘われ、ドキドキと。「うん……」しか言えず、かっこ悪いな。


傘と傘、その距離感がちょうどいい。うきうき顔も隠せちゃうもん。


  ふとよぎる、昔の雨を、何故か今……。大怪我の前、かすかな記憶。


祈ってた。君が無事でと、それだけを。海を隔てて、別れていても。


  いじめ受け、走り去ってく女の子。しぶき飛ばして……、トラック間近……。


奇跡かな? 入学式の再会は! 君は私を忘れてたけど。


絶対に! 言ってあげない、こうなれば。思い出してね、君からきっと。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私からは絶対、言ってあげない! @t-Arigatou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説