第5話

その日も何事もなく、道場で素振りをしていた。特になにかの前兆があるわけでもなく、ただただ平和な日だった。


しかし、”それ”は起こった




「ッ!!何?」



地震は本来、一番大きな揺れが起こる前に少しだけ揺れる。これを初期微動という。だがこのとき起こった地震は、その初期微動が本震のような、揺れ始めた瞬間が最大震度だった



揺れが収まり、ようやく立てるようになった。幸いなことに自身による家屋の倒壊などはなかった

自分の無事を認識したと同時に、外から悲鳴が聞こえる



「な、なにあれ……」



鏡華の目に映ったのは、残酷にも瓦礫を持って女性を殴打する緑色の小さい鬼、ゴブリンだ

思わず目をそらし、ゴブリンの死角に入る。

あのような生き物がいることも驚きだが、それと同時に倒さなければという気持ちが沸き上がってくる。

しかし鏡華は、真剣を人は愚か生き物に向けたことはない。竹刀で倒せるような敵ではないことはわかっている。




「……うん」



覚悟を決め、真剣がおいてある倉庫に走る。

倉庫の鍵は基本的に鏡華か家主の祖父が持っていて、幸運にも今日は鏡華が持っていた

急いで鍵を開け、自分に合そうな刀を見つける。倉庫には100もの刀が保存してあり、その全てがきちんと手入れされている



「どれがいいんだろう…」




一つ一つ手にとって感触を確かめるが、正直これだ!というものがまだない。ほとんどの刀を手に取り、最後の一本まで来た。

ただこの最後に残った刀だが、かなり厳重に保管されてる。

結構時間をかけ、やっと開けることができた。




「これは……」




軽く握っただけでもわかる。恐らく世界中探してもそうない名刀だ。自分に使いこなせるか不安はあるが、先程握ってきた99本より圧倒的に手に馴染む。

これにするか……




【名刀:天照】

身体能力+500 魔力+300 精神力+200 総合力+1000

固有スキル

閃撃 光魔法 自動修復 





名前:御上鏡華みかみきょうか  レベル1

身体能力10(+500) 魔力5(+300) 精神力15(+200) 運10 総合力40(+1000)

スキル

身体強化 剣閃 剣姫

固有スキル

拡張 【ーーー】











最初に狙うのはさっきのゴブリン。おそらくもう移動はしているだろうがまだ遠くへは行っていないはず

屋根へと登り辺りを見渡した

すると先程のゴブリンなど比べ物にならない惨劇が目に映る


現代に恐竜が、銃火器が効かない状態で復活したらこんな風になるんだろうなという、現代の自然が生易しく思えてしまうほどの弱肉強食



まだ若干15歳の鏡華には耐えられない光景であった。

名刀:天照が如何にステータスをあげようと、それは刀に触れている時だけ。今は鞘に納めており、精神力は普通の女の子だ

足がすくみ、腰は抜け、屋根の上で子鹿のように震えている。

その場から逃げるのに、十分すぎる理由だった




おぼつかない足取りで向かったのは、幼なじみである天馬の家だった

天馬の家を見た瞬間、希望が溢れた。外見になんの変化もなく、あるとすれば所々血が飛び散っているだけ



「天馬も無事かも……!」



そういう期待を込め入った家はもぬけの殻。そのとき天馬は既に外へと出ていた

まだ玄関しか見ていないと判断できない鏡華は、家を隅々まで探した。

ほぼ全ての部屋を探し終え、最後は天馬の部屋だけ。なくなりかけてる期待を胸に、音を立てずに踏み入った


その直後、その静寂を破るかのような轟音が聞こえた

パニックになった鏡華は、慌ててクローゼットへと逃げ込んだ。その轟音は天馬が魔法を使った音だ。しかし鏡華にはわかるわけもなく、ただただ怯えている




何時間経ったかわからない。クローゼットの中も広くはない。そんなに長居できる空間ではない。

しかしここまで何もなかったからか、不意に鏡華の緊張の糸が切れ、眠ってしまった。




そこからさらに数時間後、天馬が帰ってきてクローゼットが開かれた。鏡華はまだ眠っていて、天馬がベッドに運んでも起きる気配はなかった。


眠っている間、鏡華は夢を見た。

起きた後あまり覚えていたことはないが、忘れてはいけないことだった気がする。……しかし、記憶にはないが、”経験・・”にはなっていた







「ん…あれ、寝てた?」



天馬が帰ってきて3時間後、鏡華は目を覚ました。

寝かされていた場所がベッドだったのもあり、天馬が無事なのかもと期待がこみ上げる。再び家の中を探そうと、ベッドを飛び出した


「うぐっ!」


ベッドを出て第一歩目、床とは違う感じがした。固いのは固いのだが、平坦ではない…恐る恐る見下ろすと、天馬がうつ伏せに寝ていた。



「天馬!!」



本当に無事だったことへの安堵感から、寝ている天馬にダイブした。



「ぐふっ!鏡華!?もう起きて平気なのか?」

「うん!生きてて良かった!」

「鏡華こそ……」







感動的な場面だろう。言葉や天馬たちの気持ちを考えれば当たり前だ。でも少し視点を変えれば、うつ伏せで顔は床に向いている天馬に、鏡華が馬乗りになりながら会話をしている。

なんとも言えない光景ではあった

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異世界化ってマジですか? もやし @moyasiiiiiiiiii

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