第4話
例の夢(?)を見て早数日。それまでと大して変わらない時間を送った。
あの夢の印象が薄れていっていたとき、”それ”は起こった。
「じ、地震!?」
朝、休日の気の抜けている時間を狙ったかのようなタイミングで大きめの地震が天馬を襲った。
地震が長いこと続くことはなく、色んなものが倒れたりと言ったことは少ない。
地震情報を見ようとテレビをつけると、信じられないものが目に入った。
『緊急地震速報です。先程、全国各地で震度5強の地震が発生しました。この地震による津波の心配はありません。ですが念の為、海が近い地域にお住まいの方は避難をお願いします。
ん?あ、あぁぁぁぁぁ!!』
アナウンサーがカメラから目線を外したかと思えば、次の瞬間に叫び声を上げた。その他にもいろんな声が聞こえてきた。恐らくカメラの後ろにいたスタッフたちだろう。
何事かと思い、テレビを凝視しているとカメラが倒れたのだろう。画面が大きくブレ、床が写った。そこに見えたのは、大量の血だった。
「キャアアアアアアアアアアア!!」
テレビ越しに血の池を見たのと同時に叫び声が聞こえた。慌てて外を見ると、ある小説を思い出した。
その小説とは、異世界転生もののことだ。なんでも最近流行っているらしく、友達にいくつか借りたことがある。
今目の前に広がっている光景は、さながら異世界のようだった。
一戸建ての二階という決して高くない場所からでも、処理しきれないほどの情報が流れ込んでくる。
あるところでは緑色の小さい鬼が女性を襲っていて、あるところではバイクよりも一回り大きいぐらいの狼が子供を襲っていた。
そしてそのどちらもが、俺が見ているときに殺された。
「あ、あぁ…」
人が殺されるところなんて始めてみた俺は、つい腰が抜けてしまった。逃げないといけない。助けないといけない。いろんな感情が交差していて、頭がパニックに陥っている。
そんな時…
『おそらく君なら私の思っている行動に出るだろう。』
神久夜のその言葉が、ふと頭に響いた。神久夜が、どういう行動をすると思っているのかはわからない。けど、見てくれてるかもしれないんだ。カッコ悪い姿は見せられない…!
「ステータスプレート」
名前:桜田天馬 レベル1
身体能力10 魔力10 精神力10 運1億 総合力1億30
スキル
魔法 強化
固有スキル
運二乗 再生 魔法付与エンチャント 自動結界 運気譲渡 最適化
称号
《人生を変えられる権利》の所有者 《世界を守る義務》の所有者
「よし。あの時と何も変わってない」
ステータスプレートが出ることを確認し、もう一度外を見る。
周りにもう人はおらず、いるのはモンスターだけ。とりあえず緑色の小鬼から鑑定をかけてみる
種族:ゴブリン レベル2
身体能力15 魔力5 精神力10 運10 総合力40
スキル及び固有スキルなし
ゴブリン……異世界転生ではお馴染みのモンスターだ。身体能力で劣るから近接戦には持ち込みたくないが、魔法の使い方もよくわからない。
「こういう時も、小説ではイメージするだけで炎が…」
ボッ!
「えぇ!?」
思っていたような炎が手のひらから出て若干焦る。消えるようにイメージすると、その通りに消えた。
「イメージ…だけじゃないだろうけど、とりあえず使えることはわかった」
そうとわかると、家にあったスポーツウェアを着て外に出る。
そこまでひどいわけではないが、普段嗅ぐことのない匂いが鼻を刺激する。息をするのも不快に感じる様になってしまった家の周りではゴブリンが一匹歩いていた。
物陰に隠れ、魔法を撃つタイミングを見計らう。
するとゴブリンがこちらに背を向けた。その隙を見逃すことはなく、間髪入れずに魔法を放つ。
「”火球”!」
イメージを強めたほうが良いと思い技名なんてつけたが、効果はあったみたいだ。
どんどん燃え広がり、ゴブリンを炎が覆い尽くした。
必死に消火しようと悶ていたが、すぐに事切れた。
《レベルが上がりました。ステータスが上昇します》
「!?」
ゴブリンが事切れたのとほぼ同時に謎の声が聞こえてきた。感情が籠もっていない、まるで機械のような冷たい声だった。
「レベルが上がったって言ってたよな?それにステータスも…ステータスプレート」
名前:桜田天馬 レベル2
身体能力20 魔力20 精神力20 運1億 総合力1億60
スキル
魔法 強化
固有スキル
運二乗 再生 魔法付与エンチャント 自動結界 運気譲渡 最適化
称号
《人生を変えられる権利》の所有者 《世界を守る義務》の所有者
「本当だ!上がってる!」
ステータスが上がっているのは素直に嬉しい。特に運が上がっていないのは凄く嬉しい!
それに改めて体を動かすと、前よりも体が動くのがわかる。
ふと燃え尽きたゴブリンを見てみると、何か石みたいなのになっていた。
石のような見た目だが、明らかにその辺に転がっている石と比べて異質な雰囲気を放っている。
「これって…魔石ってやつかな?」
鑑定をかけてみると、見事に当たっていた
魔石(極小):低位のモンスターが落とす魔石。5分明かりを灯す程度のエネルギーしか秘めていない
「これ、電池みたいなものとしても使えるのか…でもこれを使って、の物なんてないからあっても仕方ないんだけど」
そう言って、魔石をポケットに入れ、別の場所に移動する。
移動する先々は、もうモンスターによる破壊が進んでおり、ほとんどが廃墟のようになっていた。
幸か不幸か、人に会うことはなくモンスターを狩りまくった。
こいつらがどこから現れてきたのか、など色んな疑問は残るが一先ず日が落ちてきたので家に帰ることにした。
「良かった。無事だ」
幸い、俺の家はモンスターに壊された形跡がなかった。しかし……
「ん?窓が開いてる?」
確かに鍵は掛けてなかったが、モンスターにしてはきれいに開けてある。もしかして、逃げ遅れた人がいるのか?
恐る恐る家に入ると、靴のあとがあった。それは二階に続いていて、さらに辿ると俺の部屋に向かっていた。
正直恐怖を感じていたが、勢いよく扉を開ける。が、そこに人影はなかった。しかし足跡が残っていたのでよく見てみると、クローゼットの前で終わっていた。
もうここまで隠れるとモンスターではないと確信したので、思い切って声を掛けてみた。
「あの、誰だかわからないけど、もうこの辺にモンスターはいないよ?」
もちろん応答はなく、もう諦めてクローゼットを開けた。知らない人が入っているとばかりに思っていたが、そこにいたのは、幼馴染の鏡華だった。
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