少女達の世界を守る戦い~私達はそれでも素晴らしい人生があると信じて~

黒金 影輝

それでも私達は明るい未来があると信じていた

 俺は、魔法少女を育成する役割をしている男だ。

 だが、それも今日で終わりだ。


「全く~、あんたはなんでいつもそう、前に出ないのよ~」


「ごめんなさい……私……こう言うの苦手なの」


 そう、言いながら俺の後ろに歩いてきたのは、おてんばな女の子と気が弱そうな眼鏡をかけている女の子だった。

 翌々見ると、俺の担当魔法少女の井原戸ケいばらとがり音無可憐おとなしかれんの姿がそこにはあった。

 井原は、さっそうと軽い足取りで歩いて、音無は重いものでも背負ってかのように、少しずつ忍び足で進んでいる。



 それも、無理もない。

 少女達は、命懸けで宇宙の侵略生物、ギャラクシーモンスターと戦う、この世を守っている救世主なのだから。

 思えば、数々の魔法少女達を見てきたが、ほとんどはギャラクシーモンスターに、腹を鋭い爪で貫かれたり、体を引き裂かれて真っ二つにされて死んでいった。

 まさに、地獄絵図で魔法少女達はそれを了承して尚やっているのだが、だとしても気が引けてくるだろう。

 俺は、正直何も感じてはいないが。



 疑問に思う者も、要るとは思うがそんなことがあって、何故少女達は魔法少女になることを選んだかと言うと、お金が稼げるからだ。

 通常、子供は働いてはいけないが、この職業だけは別で国から認可を貰っていて、少女しかなることが出来ないから仕方ない。

 

「はぁ~、この仕事いやだわ~だけどやるしかないのよね!」


「まあ、戸ケ里ちゃんのところは、弟さんと妹さんがいるからね~仕方ないよ~」


「そう言うことを言わないで!

なんか、余計に気分落ち込むから!」


 この、辛辣に井原に突っ込んできた女の子は、何時もマイペースな我有雅麻奈がうがまな

 彼女は、親からは全く相手にされずに今まで生きてきている、つまりはネグレクト。

 その他にも、井原は親から虐待されていて、そこから逃げ出すように姉弟と出てきて、今は国から用意してもらったアパートに、三人で暮らしている。

 そして、音無は親からやりすぎな位のエリート教育を受けさせられている。

 因みに、魔法少女の仕事を契約したのも親と言う、モンスターペアレントとと言うのに、相応しいくらいの家庭。

 本当にこんなんばかりで、魔法少女になるものは様々な家庭問題を抱えている、者が集まってくる。



 つい先日も、五人くらい入ってきたが、全員もれなく問題児ばかりで、パパ活やら、万引きやら、貧困などがあったが。

 まあ、死んじまったのだから今更何もないけどな。


「全く……覇権はけんさんは、幼気な少女達が死んでいくのに、心が痛まないの」


「そう言うなよ……宮島」


 宮島恋歌みやじまれんかは、そう言いながらポニーテールをたなびかせる。

 彼女は、俺の仕事の手伝いをしているスタッフだ。

 宮島は、俺のことを嫌いっている。

 理由は、一目瞭然だとは思うが、少女達の死を全然悲しまずにやっているのが、気に食わななくて気に触るらしい。

 全く、宮島はヒステリーが過ぎる、この前も魔法少女を助けてしまって、罰として給料を減らせされたばかりと言うのに。



 俺は、宮島が言ってることは分かっているつもりだ、だけどそれは彼女が正しいとかそんなんじゃない。

 彼女のことを、どうしようもないダメな例として理解している。

 だって、魔法少女は国から与えられた仕事なのだから、普通はそんなことで目くじらを立てない。

 国に、逆らうと言うことはテロと同じことをしているということ、それは危険を伴う行為であり、下手をしたら消される覚悟もいる。

 それなのに、よくそのような発言ができるのだと、俺は毎回呆れている。



 それから、暫く経って俺は魔法少女達、井原と音無と我有と戦っている。

 思い出したのだ、俺が本当はその宇宙の化物と同じ生物で、地球を侵略しにきたことを。


「あんた! 何で、こんなことをするのよ! それに、あんたがあの怪物のボスなんでしょ!?」


「それは……お前が知っているだろ……この世は、自分勝手な連中が多すぎる……だから、俺は侵略してそれを無くそうと」


 そうだ……俺は、この腐った世の中を変えるために、宇宙の皆を集めて征服しようとした。

 しかも、政府はそれをどうにかしようと、爆弾とか兵器を使って殺そうとしたが全く効かなかったため、飲食物に強力な睡眠薬を入れて、記憶を忘れさせたのだと。


「お前は……それでも、この国を守るのか」


「私は、それでも未来に行きたい! だから、あんたを殺す!」


「それに、あんたは音無と我有を殺したじゃない! だから、あいつらの復讐のためにも殺さなきゃいけないのよ!!」


 そうか……俺は、音無と我有をころしてしまったのだと。

 俺の後ろには、腹を貫かれた音無と引き裂かれて真っ二つになった、我有の死体があった。

 それは、見るも無残な光景で周りには血が大量に、地面を覆い尽くすように赤い色に染まっていた。


「あんたは! 死ねぇぇぇ!!」


「まあ……ここで、死ぬわけにはいかいんでな……お前を、殺させてもらうよ」


 俺は、井原の魔法で腕が吹き飛ぶも、生えてきて何度も攻撃する。

 井原は、魔法でバリアみたいなものを張るが、破壊される度に張り直している。



 それから、お互い移植即発な魔法と物理攻撃が続くが、遂に決着がついた。

 両者、お互いのお腹を武器で貫かれた。

 俺は、井原の魔法で出てきたメイスで刺されて、井原は俺の爪で腹を貫かれた。


「ぐはぁ!」


「ぐあ!」


 俺と井原は、口から血が垂れ流されながら、何とか意識を保って立っていた。

 しかし、井原は地面にうつ伏せになって倒れて、顔だけはこっちを向いていた。


「くそ! あんたなんか……あんたなんかに!」


 井原は、歯を食い縛り悔しそうに泣いていた、それは未来をもう生き抜けない、彼女の最後の一言だった。


「本当に……あなたは、最後まで冷徹で冷酷で、優しい人でしたよ」


「そう言うなよ……宮島」


 俺は、最後その人事で意識を失った。

 彼女は、耳元で井原達魔法少女のような、家庭に問題があるものを救うと約束してくれた。

 本当に、二度とこの子達のような者が、現れないように祈るよ。

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