第2話 入学式
雨の音で目を覚ます。昨日の夜、少しじめじめしていたため、窓を開けてそのまま眠ってしまったようだ。
せっかくの入学式なのに初出校が雨かよ、うんざりとした気持ちでゾンビのようなうめき声をあげベッドから起き上がる。顔を洗い、買っておいたコーンフレークを食べ、歯磨きをする。
ベッドの上に座り、魂を抜かれたかのように天井を眺める。部屋がマンションの最上階のため窓に向かって天井下っている。自分がこの部屋にした決め手だ。部屋自体は狭いのだが、天井が高いため少し広く感じる。天井の高さは精神的な部分にも影響が出ると聞いたことあったのでメンタルの弱い自分にとって最適な物件だろう。
傍らに置いているデジタル時計を見る。8時になろうとしていた。スーツに着替えるのに多少なりとも時間がかかるだろうと思い、早めにクローゼットからスーツを取り出し着替え始める。数日前に試しにスーツを着てみたが、ネクタイの結ぶことにどうしても手間取ってしまったが、なぜか今回はすんなり結べた。いい兆候だ。
8時20分。入学式は9時半から始まるため時間がかなり有り余ってしまった。ベッドに寝転ぼうにもスーツなのでどうにもくつろげない。結局デスクの椅子に慎重にもたれかかった。スマホにあるSNSのアプリを開き、”大学 入学式”と検索する。
無限に流れ込んでくる期待、不安、祝福の言葉。どれも同じような言葉が書き込まれている。すぐにアプリを閉じ、外を眺める。周りは学生マンションで囲まれているため、とても無機質な風景になっている。
ダメだ、気分が浮かんでこない。少しポジティブなことを考えなければ。
どんな大学生活を送ろうか。まず友達を作らなければ。その後、サッカーか、フットサルの部活に入ろう。ガチのやつじゃなければ。その後バイトをして、彼女をつくって…。
そうこう考えているうちに、時間がだいぶ経っていた。網戸越しに下を見てみる。傘を持ったアリの集団が大学方面へ向かっている。自分も混ざらなければ。
エレベーターで下まで下り、マンションを出る。マンションの前が横断歩道になっており、ちょうど赤信号になっていたため人で渋滞していた。信号が青になり、一斉に歩き出す。大学の正門まで歩き、そのまま会場となっている体育館に入る。床は革靴のままでもはいれるようにシートが張り巡らされている。傘入れ用のビニール袋を受け取り、それに傘を入れる。席順は早く来た人から前に座る感じらしく、前を歩く人に続いて、パイプ椅子に座った。少し時間が経ち、人もどんどん増えてきた。右隣をちらりと見てみる。奥の人となにか話している。対して左のほうは、退屈そうに一点を見つめている。とりあえず右から話してみるか。
「ねえ、君たち二人は初対面なん?」
「ああ、そうだよ。」もう一つ奥のやつもうなずく。
「どこの学科なの?」
その後出身やどこのサークルに入るかなど入学はじめのお決まりのフレーズで会話をした。そして、入学式が始まる。左のやつにも話しかけようか迷ったが、どうせここだけの関係なのであきらめた。
式は2時間ほどで終わり、そのまま各学科ごとに分かれて教室に移動しオリエンテーションが行われた。淡々と説明がされ、そのまま解散となった。ここから本命となる。ここである程度のグループが作られるため、少し様子を見て隙を窺う。とはいうものの中学、高校と通してグループというものに無頓着だった。話したい奴に話したいときに話す。そんな感じで過ごしていたため、今後もそのように過ごすつもりではいる。しかしながら、これからは自分で履修を組まななければならない。すなわち助け合いが必要だ。
少しずつグループができ始めてきた。目星をつけ、その輪に入る。そしてお決まりのフレーズで会話をして、連絡先を交換する。タイミングを見計らい、抜け出しまた別の輪に入り、同じく行動する。これでほとんどつながりを作れたはずだ。女子以外は。
最初に入ったグループで一緒に履修を組むことになった。滑り出しは順調だ。これである程度の大学のエンジョイ生活が保障された。
中途半パに人間 IzteN @Kinggnu
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