第7話 幸せにして欲しい


//SE 小雨の音(シーン全体を通して)

//SE ドアを閉める音


「先輩」


「髪の毛、乾かし終わりましたか?」


「……はい。ふふっ、偉いですね」


「……いつの間にか、雨、降ってたんですね」


「小雨なので、お風呂では全然気づきませんでした」


「……ん? どうしました?」


「……私の部屋、いい匂いがする?」


「……もう」


「そういうことばっかり気にしてる変態さんには、ジュースあげませんよ」


「ふふっ、冗談です」


「結婚したいほど大好きな彼女の部屋ですもん」


「匂いくらい、気になっちゃいますよね」


「……いえ、特に香水とか、フレグランスとか」


「そういうのは使っていないので」


「……多分、純粋に」


「……私の匂い、だと思います」


「ほ、ほら、先輩」


「ジュースですよ」


「早く飲んでくださいっ」


//SE 氷がグラスに当たる音


「私も、いただきます」


「……ごく……ごく……」


「……な、なんですか」


「……っ!?」


「み、耳元で、飲んでる音を聞かせて欲しい?」


「い、嫌ですよ、さすがに」


「全然良い音じゃないですし」


「私が、恥ずかしすぎます」


「だからダメです」


「……そんな顔してもダメです」


「……ほら、おかわりあげますから」


「それで我慢してください」


//SE 炭酸飲料を注ぐ音


「……ごく……ごく……」


「はぁっ……おいし」


「先輩も、そんな目でこっち見てないで」


「味に集中してください」


「……」//ジュース飲む先輩を見守る


「おいしいですか?」


「……はい。なら良かったです」






「それじゃあ先輩」


「そろそろ、私を不安にさせた罰を受けてもらいます」


「……謝ってもダメです」


「ごめんなさいじゃ許してあげません」


「……何をするのかって?」


「えっとですね」


「先輩はそのまま、椅子に座っていてください」


「はい。そのままです」


「……で、では」


「……膝の上、失礼しますね」


//SE 衣擦れの音

//声が近づく


「そ、そんなにびっくりしないでください」


「これも罰の一つなんですから」


「……むしろご褒美?」


「……そりゃあ」


「……本気で先輩を罰しようだなんて」


「思ってるわけ、ないじゃないですか……っ」//小声で


「で、でも」


「これは、私の言うことを全部聞いてもらうっていう」


「れっきとした、罰ですから」


「……納得しましたか?」


「……はい」


「じゃあ、私が落ちないように、後ろから私のこと抱きしめてください」


//SE 衣擦れの音


「もっと」


「……もっと、私のこと、愛してるって思いながら、抱きしめてください」


//SE 衣擦れの音


「……ああ、幸せ」


「これ、すっごくいい感じです」


「……私」


「今まで、先輩のお願いをたくさん叶えてきて」


「もちろん、私がそうしたいから、していたんですけど」


「本当は先輩からも……色々、して欲しくて」


「……」//恥ずかしがってる吐息


「先輩、ずっと消極的で」


「全然積極的になってくれなくて」


「……私がこんなに先輩のこと好きだってアピールしてるのに」


「将来結婚したいっていうのも」


「すごく時間がかかって……」


「……ふふっ、そうですね」


「たしかに、今日はいつもよりかは積極的でしたね」


「膝の上に、スカート穿いてる私を座らせたり」


「お風呂で抱きしめてくれたり」


「……告白、してくれたり」


「でも、まだ足りません」


「私」


「もっともっと、先輩から愛されたいです」


「先輩から、『大好き』って、いっぱい言われたいです」


「だから、先輩」


「言ってください」


「『大好き』って」


「私の耳元で、囁いてください」


「……ほら、恥ずかしがらないで?」


「先輩の言葉で、私をもっとも〜っと、幸せにしてください」


「……タイミング、言いやすいように、指示してあげますから」


「……ね?」


「行きますよ?」


「……せーの」


「……」//嬉しそうな声


「ちゃんと、言えましたね」


「ありがとうございます……先輩」


「でも、もう一回、お願いします」


「……せーのっ」


「……」//嬉しそうな、小さめの吐息


「……もう一回」


「せーのっ」


「……」//嬉しそうな声


「ああ、嬉しい……」


「……幸せです」


「幸せすぎて、また泣きそうになってきました」


「私も、大好きですよ、先輩」


//SE 氷がグラスに当たる音

//耳元に近づく


「……あの」


「なんでジュースのグラスを、私の前に持ってくるんですか?」


「それに……私の口に顔まで近づけて」


「いい雰囲気が台無しです」


「……飲みませんよ」


「……ストローを向けてきてもダメです」


「……」//無言


「ま、まあ」


「……一口だけで、いいなら」


「……飲んであげても、いいですよ」


//SE 衣擦れの音


「もう、そんなに強く抱きしめないでください」


「身動きが取れません」


「はぁ……離してくれる気はなさそうですね」


「なら、ストロー、私の口に入れてください」


//ストローを咥える


「……ふぁい、じゃあ、のみまふよ?」


「……ごくっ……」


「はぁっ」


//ストローを口から離す


「ど、どうでしたか?」


「え、もう一回聞きたい?」


「……もう」


「じゃあ、その代わり」


「私のこと、『愛してる』って、耳元で囁いててください」


「『世界で一番可愛い』、とかでもいいですよ」


「……ふふっ、はい」


「交渉成立です」


「じゃあ……ストロー、またください」


//ストローを咥える


「ちゃんと聞いててくらはいね?」


「……ごく……ごく……ごく……」//耳元で囁かれる言葉に喜びながら


「はぁっ」


「どうれひたか?」


「……最高らった?」


「……わらひも、しぇんぱいの言葉、うれひかったれすよ」


「……せっかくなので、コップ一杯分らけ、付き合ってあげまふ」


「……ごく……ごく……ごく……」


「はぁっ」


「……ごく……ごく……ごく……」


//ストローを口から離す


「はぁっ、はぁっ」


「はい、もうおしまいです」


//SE 氷入りのコップをテーブルに置く音


「満足しましたか?」


「……ふふっ、喜んでもらえたら、私も頑張った甲斐がありました」


「……」//無言で小雨の音を強調


「ああ……」//幸せに浸りながら


「雨の音を聞きながら、大好きな先輩に抱かれるの、本当に幸せです」


「……ねぇ、先輩?」


「今日、寝る時……」


「先輩に抱きついてても、いいですか?」


「……やった、ありがとうございます」


「あ、それと……先輩」


//SE 衣擦れの音

//耳元に近づく


「また私に囁いて欲しくなったら、いつでも言ってくださいね」


「私、嫌がったりとかしないので」


「いつでもこうやって、耳元で囁いてあげますから」


「……だから、先輩も」


//さらに耳元に近づく


「……私のこと、これからたくさん幸せにしてくださいね」


//元に戻る


「……はいっ」


「約束、ですよ」


「……」//恥ずかしがってる吐息


「……先輩」


//もう一度耳元にグッと近づく


「大好きです」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

先輩のことがだ〜いすきなダウナー後輩彼女ちゃんは、なんでもお願いを聞いてくれる Ab @shadow-night

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ