ジャンキー・イクスキューズ

花野井あす

ジャンキー・イクスキューズ

ねじったその束が、不格好な螺旋を描いていく。


束に混ざるのを拒んだ短い個体が、ぴょんぴょんと束から弾かれる。

そのはみ出し者の切っ先はきらきらと光り、そしてたまに細く、二つに別れる。


少しざらざらとした手触りが心地よくて、つい何度もねじってしまう。

指の上、指の隙間。

二つの指で挟むこともある。

その束の通る感触は癖になる快感を呼ぶ。


それは良くないことだと知ってはいる。

不快な気分を誘うこともあることも。


それでもその束のねじられる音と、その束が皮膚を擦れる感覚が病みつきになり、

気が付けば再び束をねじっている。


理性で抑えることもある。言い聞かせて、我慢して、自分の手を自分の手で押さえつけるのだ。

しかし一種の焦燥感が湧き出てきて、

気が付けば再び束をねじっている。


これは麻薬だ。

洒落にならない、合法ドラッグ。


だれの目にも見えない、止められない。

こころを捉えて離さない。


けっきょく、今日もわたしは髪をいじるのだ。

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ジャンキー・イクスキューズ 花野井あす @asu_hana

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