黄緑色の雨

一色凛夏

黄緑色の雨 /一色凛夏


待つことで少し世界を覗きたい 同じ目線で蟻たちを見る


熱心に定点で撮る踏切の動画を観てる彼と教室


これからのことをいつでも考える涙の筋が光る横顔


普通ってなんなのだろう黄緑で描かれた雨も照らす夕焼け


人生の地軸が違う人たちの侮蔑はずっと知らなくていい


この子らが大人になって今日の日を思い出さずにいきますように


激流のスイッチがあり絶対に理由はあって押されてしまう


もう椅子は床に投げつけられていて向き合わなくてはならない時間


どしゃぶりの運動場に駆け出した彼を裸足で抱きしめに行く


嗚咽からたまに漏れ出す本音だけ集めて二人組み立てている


ごめんねを促すときに胸中で広がる苦く曖昧な泥


どこまでを先生として苦しみや痛みに耐えてやれるのだろう


今だけは静かな海としてなにも言わずに燃えたぎる手を握る


腕にあるあざを眺めるこの青は彼の怒りを受け止めた色


少しずつ理解しようと思うこと 愛は尊いはずだったから


まるい手が私の痛くない膝を何度も撫でる、ずっと、何度も


間違いを間違いと言う勇気さえ今日もこの子に教わっている


きらきらのボール見つけて「あったよ!」と知らせてくれる笑みの輝き


鉛筆の使い方からひとつずつ覚えていこう右手を添える


せんせい、とはじめて呼んでくれた日の空は等しく青かったこと





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黄緑色の雨 一色凛夏 @irohaririri

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