第28話 「唐菓子」について
今回は冬籟と白蘭が仲良く食事を共にします。
以前も書きましたが、中華ファンタジーを書く皆様は食べ物の描写がお上手でいらっしゃいますよねえ!
鷲生も頑張りたいのですが、いかんせん資料になるものが上手く見つけられず……。
もともとあまり外食もしないですし、コレステロールや中性脂肪とかが気になるので中華料理や点心とか食べることもありません。
そもそも現代のそれらは唐の時代とかの料理とも違いますし。
後述するように、今頃になって手掛かりになりそうな情報が出てきましたが、拙作を書くのには間に合いませんでした。
中国史で史料が見当たらないので、日本の天平時代を参考にすることにしました。
2023年の3月25日、26日に奈良平城京旧跡歴史公園で天平時代をテーマにしたイベントがあったので行ってきました。
中に、「古代スイーツ」の講演・試食があったんです。
その時配布されたレジュメによれば「古代スイーツ」とは「歴史資料や古典文学など、典拠に基づき、現在入手できる材料で再現した古代菓子」のことだそうです。
講演された方は奈良女子大学の前川佳代さん。『古典がおいしい!平安時代のスイーツ』という本を出しておられます。
帯に「『枕草子』『源氏物語』に登場するスイーツを作ってみよう」とあるようにレシピ本です。
鷲生が平安ファンタジーを書いていたときに気になっていた本です。
↓
出版社の紹介はコチラです→
http://www.kamogawa.co.jp/kensaku/syoseki/ka/1176.html
日本の古代やそれに影響を与えた唐の食文化に興味のある方は是非!
さて。鷲生は3月のイベントで古代スイーツを食べて来たのですが。
その中でスイーツというより軽食になりそうと思ったのが餅餤です。
拙作の今回の場面でも食事中に冬籟が「菓子に近い」と述べています。
前川佳代さんのレジュメによれば
「楊氏漢語抄云、裏餅中納煮合鵝鴨子并雑菜而方截。一名餅餤。→餅の中に煮合わせた肉や野菜を包んで方形に切ったもの」とされています。
鷲生が食べたのも粉で作った薄い皮に肉や野菜が包まれていたものでした。
美味しかったですよ!
このイベントでは前川佳代さんの講演だけでなく、会場で古代食のお弁当が販売されていました。
奈良パークホテルさんのもので、こういうイベントでなくてもいつでもホテルで出してもらえるそうですよ。
その中に「索餅」が「唐菓子」として入っていました。
拙作の次回で登場します。
これは平安時代関係でも出てきます。粉をこねて縄(索)状にして揚げたものです。
京都地主神社のサイトにレシピが載っていました。
( https://www.jishujinja.or.jp/tanabata/p_recipe/recipe04.html )
拙作では白蘭が食いつくように「甘い蜜」がかかっているという設定ですが、これは鷲生の独自設定です。
冬籟も「この店では」と言っています。女の子なら甘いものを喜ぶかなあと思ったその店の営業努力ですw
2023年3月の天平時代イベントの探訪記を書いております
↓
奈良へ古代へ中国へ! 平城宮歴史公園のイベントが熱かった! 前編
( https://kakuyomu.jp/works/16817330647534553080/episodes/16817330654952208181 )
奈良へ古代へ中国へ! 平城宮跡歴史公園のイベントが熱かった!後編
( https://kakuyomu.jp/works/16817330647534553080/episodes/16817330654972130205 )
この時代の料理について、最近意外なところで情報を得ました。
冬籟の故郷、北方の毅国をイメージするのに『図説中国文明史8 遼西夏金元』を読んでおりましたら、「進んだ食への関心 元代の料理本」というコラムがありました(188頁)。
その元代の料理本が「6世紀前半の北魏の農書『斉民要術』や南北宋の都市繁盛記『東京夢華録』『夢梁録』などに見えていた漢民族の料理を数多く含む」のだそうです。
そのような史料があるなら、唐代の食事についても何か資料本があるかもしれないですね。心がけて探してみたいと思います。
*****
この食事を通じて、冬籟は白蘭を気遣い、白蘭のためを思って話をします。
二人がぐっと近づきますが……まだまだ波乱は待ち構えています。
どうか最後までご愛読くださいますよう。
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