第29話 「トルコ系民族」について


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追記


下記の文章を公開したところ、鷲生が引用した文献にはやはり間違いが多いとのコメントをいただきました。

鷲生自身も、この文章を書いてから、別の専門書を読み、改めて「あれ?」と思うようになりました。

ざっくり「アジアにいたトルコ系民族が西に移動して今のトルコ人になった」程度に読んでおいてくださいませ。

鷲生が読んだ別の本は、森安孝夫さんの『シルクロード世界史』(2020年)です。森安孝夫さんは歴史学者でいらっしゃるので、こちらの方がより正しいと思います。


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 今回は、北の毅国から西の琥に戦乱を逃れて来た人がいるというお話でした。

 拙作中でも地続きですから交流はあります。


 ソグド人が突厥と混交していたことについては森安孝夫さんの『シルクロードと唐帝国』に述べられています。


 今回は、雑談に近い形で突厥が西アジアに来ることについて書こうと思います。


 鷲生がウン十年前に世界史を勉強していた時も、突厥が「トルコ系」と聞いて「?」と思ったものです。

 トルコってギリシャのお隣の、中近東にある国だよね? それがなんでずっと北東のアジアにいるの?と。

 大人になった今も「なんで?」と不思議なままでした。

 ええ、物知らずでスミマセン。


 結論から言えば、そもそも古代のアジアにモンゴロイドな容貌のトルコ系民族がいて、西に移動し、コーカソイドと混血して今のトルコ人の容貌になったようですね。


 今回取り上げるのは図書館で見かけた『「民族」で読み解く世界史』という本です。

 著者は予備校の世界史講師だった方です。

 とても面白く読んだんですが、某ネット書店では「間違いが多い」とのコメントもありましたので、その分さっぴいておいてくださいませ。


 トルコ人については147頁から書かれています。


「日本人にとって、トルコ人のイメージは『アラブ人でもない、ヨーロッパ人でもない、その中間の民族」といったところでしょう」


「トルコ人は、もともと中央アジアからロシア中南部にいたるまで、きわめて広い範囲に分布していました。トルコ人は、われわれと同じくモンゴロイド人種でした」


「トルコ人は古代(殷、周のじだい)において中国から「てき」と呼ばれていました。(中略)この狄がテュルクという発音になって北方に伝わり、さらにテュルクに対する感じのあて字として、丁零ていれい鉄勒てつろく突厥とっけつとなり、時代によってこの3つのあて字が変遷しました」


「紀元前2世紀、漢王朝の武帝がモンゴル人の匈奴を討伐して以降、モンゴル高原では匈奴が衰退していきます。一方、トルコ人が次第に勢力を拡大させます。トルコ人勢力は魏晋南北朝時代から隋唐時代にかけ、モンゴル高原全体に広がり、このとき中国から突厥をよばれました」


「4世紀から7世紀まで、中国北部では突厥が大王国を形成し、強勢を誇ります」


「中国にも野心を持っていた突厥ですが、6世紀に隋・唐王朝が成立し、中国の力が強まると逆に押し戻されていきます。突厥は唐に討たれ、モンゴル高原を棄て、西方へ移動を開始します」


「モンゴル高原からタリム盆地・順がる盆地へ移動します」


「8世紀、突厥はウイグルと名前を変えます」

(↑鷲生はこの表現は少し違う気はしますが……)


「9世紀、トルコ人はさらに西進し、この時代にウイグルからキルギスと名を変えます。『キルギス』はトルコ語の数字『40』を意味する『クゥルク』から派生するロシア語読みの言葉です」


「さらにトルコ人はトルキスタンに西進し、10世紀にはイスラム化され、カラ・ハン寵を作ります。トルキスタンは『トルコ人の住む地域』という意味でパミール高原を中心とする中央アジアの大部分を指します。


「11世紀、さらにトルコ人勢力は大きく西に拡大し、イラン・イラクに進出し、セルジューク・トルコを建国します。このとき、トルコ人とイラン人・イラク人との混血が急速に進んだと考えられます」


「(その後オスマン帝国がおこり)オスマン帝国の時代に、トルコ人と旧ビザンツ帝国領のギリシア人、南スラヴ人などとの混血が進み、今日の我々がイメージする多国間民族であるトルコ人が誕生します」


 細かく見れは「え、そうだっけ?」と思う箇所もありますが、全体の流れとしてはこのようなものだそうです。


 ちなみに、鷲生は20年ほど前に家族の仕事の都合でオランダの地方都市に住んでいたことがあります。


 そこの大学の英会話コースで、トルコ系ドイツ人の女性と仲良くなりました。


 私と夫、彼女と彼女の彼氏との四人でお出かけとかしましたし、彼女と彼が結婚したときには日本にまで遊びに来てくれたものです。


 ただ、初対面時に私がトルコのことをよく分かっておらず……。

 今回ご紹介した本にあるように、トルコ人のイメージが「アラブ人でもない、ヨーロッパ人でもない、その中間の民族」というもので、それで彼女に「トルコはヨーロッパに入るの?」と質問してしまったのです。

 今考えると無神経だったなと反省です。


 彼女はトルコ系のルーツもとても大切にしていましたし、お茶を「チャ」と発音するとかアジア圏とのつながりもよく話題にしてくれました。


 そうそう、日本に旅行に来てお店のトイレに行った後、ちょっと興奮気味に教えてくれたことw

 和式トイレがトルコのトイレと酷似しているんだそうですよw


 ちなみに、「現在のトルコ共和国では一般に、突厥の建国をもって「トルコの建国」と考えられている。」のだそうで(Wikipedia「トルコ」)、「世界史の窓」というサイトには以下のように記載されています。


「1952年には、トルコ共和国で『突厥建国1400年記念祝典』が盛大に催された。552年は、トルコ民族が世界史上で最初の遊牧騎馬民族国家を建国した年で、今日のトルコ共和国もその建国をそこまでさかのぼらせている」


「世界史の窓」では引用文献の該当箇所も明示されており、<護雅夫『古代遊牧帝国』1976 中公文庫 p.5>だそうです。


 時間空間共にスケールの大きな話ですね!


 ええと。

 今回は、鷲生はファンタジーの世界を董帝国とその東西南北と図式化しておりますが、史実では中国の北と西とにわたって大きく動いた歴史があったというお話でした。


 さて。本編の方は冬籟が白蘭の年齢を知って驚いております。

 子どもだと思っていた相手が自分とあまり年齢の変わらない女性だと知った冬籟は……。

 どうぞ、今後の展開にもおつきあいくださり、最後までご愛読くださいますよう。

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