第22話 「蝉」「市」について
このエッセイは鷲生の中華ファンタジー「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」の「あとがき」です。
拙作のURLはコチラです→https://kakuyomu.jp/works/16817330658675837815
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今回は、銀蝉が皇城を出て市場で買い物をするという話が出てきました。
卓瑛が彼の名前の由来を聞かれて、「蝉」という字は「高潔」を表すからだと答えています。
これは柿沼陽平さんの『古代中国の24時間』のお話が印象的だったから、自分の小説の高潔な人物には「蝉」を使おうとおもったからです。
「セミは、何も食べずに木のうえで鳴きつづけ、しかも脱皮することから、漢代には高潔・超俗・節操の象徴とされた」(213頁)
この『古代中国の24時間』については紹介記事を書いております。
日常描写の手引きに役立ち、著者の学者先生のキャラが楽しめる『古代中国の24時間』
↓
https://kakuyomu.jp/works/16817139556995512679/episodes/16817330647953427843
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その銀蝉は皇城の外にお出かけして、皇太后様のために市でお買い物をしていました。
そういえば。拙作は「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」というタイトルなのに、長安の商業について何も書いてなかったですね。
鷲生は日本史畑なので平安京に朱雀大路を挟んで東市と西市があったということは前から知っておりました(あ、平安時代をモチーフにしたファンタジー小説を書いており、東市が出てきますよ。「錦濤宮物語 女武人ノ宮仕ヘ或ハ近衛大将ノ大詐術」 https://kakuyomu.jp/works/16816927860647624393 )。
平安京にあったということは、モデルになった長安にもあったということです。
講談社学術文庫『長安』(佐藤武敏著)では考古学的発掘調査の結果などを織り込んで長安の様子(もちろん「市」も)について詳しく述べられています。
ただ、底本が1971年と古いので、同じ講談社学術文庫の『中国の歴史6 絢爛たる世界帝国 隋唐時代 』(氣賀澤 保規著)の方から引用します(原本は2005年刊行)。
230頁「商工業の発展と商人・職人たち」
「これらの市は、門は他の坊と同様に早朝から日没まで開けられたが、商売は正午に鼓の合図で始まり、日没より目に終えることになっていた。時間でいえば五時間ほどであろうか。一日中自由に取引できたわけではない」
実は拙作の次回では白蘭が雲雀と市にお出かけするんですが、ちゃんと「昼から始まった」ということにしておりますよw
市の構造については以下の様に記述されています。
「広さは(中略)、一周四キロのほぼ正方形、周りは同じく頑丈な坊壁で囲まれていた。ただ他坊とちがうのは、道路が十字型ではなく井字型につけられ、門が各面に二つずつ開けられていたことである。これが姿勢という言葉の由来になったとされる」
『長安』の方には「長方形の区画の街に面地部分には店舗が設けられたようである。というのは、街にのぞんだ部分の房址が比較的稠密だからである。なお長方形の区画ごとに小さい巷道(「小道」)があり、内部の通行に便になっている」(『長安』195頁)」とあります。
こまごましたお店が建ち並んでいたのかな、と鷲生は想像しています。
ただ、現代人の感覚と異なるのは以下の点です(再び『絢爛たる世界帝国』からの引用です)。
「商店は
現代のショッピングモールや商店街とかだと本屋さんや雑貨屋さん、食料品店など扱う商品の種類の違う店が並んでくれた方が楽しいですけれど……。
あ、現代でもお洋服についてはお洋服のショップが並んでたりしますね。唐の市場の「行」もそんな感じなんでしょうかね?
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先も述べましたが、次回は白蘭が市に行きます。
白蘭の宿は西市にありますが、お出かけするのは東市という設定です。
市に出かけたその夜にまた事件が起こり、そして……。
拙作も後半にさしかかってきました。
どうか最後までご愛読くださいますよう。
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