第23話 「衣装」「履物」について

 このエッセイは鷲生の中華ファンタジー「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」の「あとがき」です。


 拙作のURLはコチラです→https://kakuyomu.jp/works/16817330658675837815


 *****


 今回は、冬籟が白蘭に董の女性用の服を持ってきます。


 白蘭の服装は琥の毛織物でした。

「第5話 陛下の北妃と呼ばれる男(一)」で冬籟に「けしょうが似合っていない」と言われてしまう場面で、「琥の毛織物」「刺繍が豪華」と描写しております。

 あと、青濤宮に東妃を訪ねていく場面でも毛織物なので汗をかいておりますよw


 史実の唐の時代の西域の若い女性の服飾について直接の資料はなく……。

 もしかしたら唐の長安などに沢山いた「胡姫」についての史資料を当たれば何か服飾について情報があるかもしれませんが。

 鷲生の拙作では「胡姫」は特に存在するとはしておりませんし、酒場で大人の男性の相手をしていただろうタイプと白蘭はキャラが違います。


 白蘭は一応王族の娘ですし、性格的にははねっかえりなところがあっても、着るものとかにはお堅いお嬢様です。

 そして身持ちが固いお嬢様であることが、終盤の物語の展開に関わってきます。


 なので艶やかな胡姫ではなく、少女のような、未婚の娘が着る服をきちんと着込んでいます。

 で……時代が随分違いますが、鷲生がビジュアルでイメージしているのは、森薫さんの漫画『乙嫁語り』の女性キャラの服装です。

 アミルも好きですが、私はパリヤさんが好きなのでw、脳内イメージはパリヤさんですw

 ストンした上着に、だぼっとしたズボンをはいており、髪も何本かの三つ編みにして下に垂らしていると思ってます。


 とはいえ、今回のお話に描きましたように。

 乾燥している故郷の琥ではそんな格好で良かったものの、董に来て、しかも季節が夏に向かう中でいつまでも毛織物を着ているのは暑いです。


 そこで白蘭は、冬籟からありがたく董の服を受け取り、ここらあたりからは董の服で過ごします。

 ↑これ、終盤の展開の伏線?なんですよ~。


 董の服は、史実の唐の服でイメージしています。

『中国服装史』『イラストと史料で見る中国の服飾史入門』などの資料本を見ています。

 また、鷲生は奈良の隣の京都に住んでおり、平城宮跡で天平文化をテーマにした催しがあれば足を運ぶようにしております。


 その中で、天平衣装を着る機会があったり、花鈿をペイントして貰える機会があったので体験してきました!

 やっぱりこの時の印象が一番大きいですね。


 唐の時代の女性や、日本の奈良時代の女性の服装について皆さまにもイメージは既におありだと思いますが、一応『中国服装史』から該当箇所を引用しておきます。


この本については、下記エッセイで紹介しております。


「避けて通れぬ衣装・服装の資料『中国服装史』『中国服飾史図鑑』+”日本の古代”」

https://kakuyomu.jp/works/16817139556995512679/episodes/16817139557087514050


「唐代の女子は隋の服に従い、上に短い襦、下に長い裙を着るのを好み、裙の腰部を脇の下まで持ち上げ、絹帯で締めた」(『中国服装史』90頁)


 この本では、襟の形もさまざまで胸元の露出の大きい着こなしもあったことが述べられていますが、白蘭はそれは好まず、襟元はきっちりと止めています。


 白蘭はずっとズボン生活だったので、長いスカートのような裙を戸惑いながらはいています。


 今回は冬籟が気が利かなくて履物がないというお話でした。


 履物について『中国服装史』では以下の通りです。


「履 麻の糸で編んだ先の丸い履で、襦裙に合わせてはくものであった。唐代は小さな足を尚びはじめていたが、女子は依然として纏足しておらず、そのため、履の形は男子とは大差なかった」(99頁)


 そして同じページに「蒲草の履(新疆トルファンで出土した実物」の図像があります。


 2023年に出版の『イラストと史料で見る中国の服飾史入門』でも、唐代の女性のイラストの解説文に履についてこのように述べられています。


「女性は履を主に履いていたが、新疆トルファンのアスターナ墓から出土した宝相華文の雲頭履(うんとうり)は、錦を用いて作られた中国最初の履で、極めて精緻で華麗である」(59頁)


 どちらも「新疆トルファン」とありますので、同じ出土品でしょうか……。

 どちらにしても、革製ではなくて植物繊維で編まれたもので装飾性も高かったようです。

 ま、無骨な冬籟には縁のないものですねw


 ちなみに。

 鷲生が平安ファンタジー小説を書く際に購入した「ビジュアル日本の服装の歴史①原始時代~平安時代」の30頁に「養老衣服令で定められた礼服・朝服・制服」が乗っており、女官の朝服は「義髻ぎけい きぬ  おび しとうず くつ」とあります。

義髻ぎけいについては「付け髷(唐の流行にならったもの)と考えられる」とのことです。


 それから「靴」を「ブーツのような深いクツ」、「履」を「浅いクツ」と説明しています。


 *****


 今回、白蘭は雲雀と市までお出かけします。

 あ、白蘭の宿は西市の傍ですが、今回お出かけしているのは東市です。


 その帰りから雲雀の行方がわからなくなり……。

 雲雀はどこにいるのか。雲雀の行方不明から話がどう転がるのか。

 どうか最後までご愛読くださいますよう。







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