第12話 「犯夜」「千字文」について

 このエッセイは鷲生の中華ファンタジー「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」の「あとがき」です。


 拙作のURLはコチラです→https://kakuyomu.jp/works/16817330658675837815


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 今回も雲雀の帰りが遅くなってしまいます。


 第3回でも「坊門」が閉まると自由に外を歩けないことについて述べました。


 氣賀澤保規さんの『中国の歴史6 絢爛たる世界帝国 隋唐時代』から以下の文章を引用しております(223頁)。


「碁盤の目状にできた街路間を埋めたのが、人々の居住する坊(里)であった。坊は周りを高さ三メートルほどの土塀で囲まれ、大きな坊で四つの門、小さな坊では二門がつけられ、この門から坊内の街路や路地を経て、それおれの家へと行き着く。坊門は、鍵を管理する坊の責任者である坊正によって、日出前の四時頃開けられ、夕方日没とともに閉ざされる。したがって住人は日没までに帰宅し、翌朝まで坊から出られない決まりとなっていた」


「出られない決まり」というのは結構厳しかったようで、この文章は次のように続きます。


「もし犯せば犯夜として厳しく罰せられる」


 拙作でも、坊門が閉まった後は自由に外出できない原則となっております。


 ただ、「歴史は夜作られる」じゃないですが、夜中にキャラが動いてくれないと物語が進んでいかないのでw 拙作では警備担当の冬籟や冬籟が許可した人間はある程度外に出られるという設定ですw 物語の都合です、スミマセンw


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「千字文」は、拙作に出てくるように、手習いの教材です。


 日本の「いろは歌」のように、千の漢字を重複することなく用いた漢詩だそうです。


 私が知ったのは、コミックエッセイの『日本人なら知っておきたい日本文学』の20ページです。

 お勉強のできた紫式部が、父が兄弟に教えている横からスラスラ回答して見せて「教えてもいないのに勉強ができて。この子が男であったなら」と嘆く有名なエピソードです。

 この『日本人なら知っておきたい日本文学』ではこの場面に「千字文」を使っていたのです。


「千字文」は中国だけでなく、朝鮮半島や日本にも伝わって、こうして手習いに使われていたようです。


 鷲生は平安ファンタジー小説を書いておりますが、その中でも手習いの教材として登場させております。


 その平安ファンタジー小説はコチラですw

 ↓

「錦濤宮物語 女武人ノ宮仕ヘ或ハ近衛大将ノ大詐術」

 https://kakuyomu.jp/works/16816927860647624393


 唐の家庭教育はどうであったか。


 鷲生は『大唐帝国の女性たち』で母親が担っていたと読んだ記憶があるのですが、現在該当箇所が見つかりません。


 他の資料本『図説中国文明史6隋唐 開かれた文明』の237頁~239頁は隋唐時代の「学校教育」について書かれています。


 その中の「私学の教育システム」に以下のような記述があります。


「児童への啓蒙教育は、ある場合は家塾で学び、ある場合は寺院で学び、ある場合は村里の学校で行われました。家塾は官僚または知識水準の高い家庭だけに置かれ、父母や兄弟がみずから教えるか、先生を招いて授業をしました」


 宿の女将さんは唐の時代では別にインテリ層ではないと思いますが、拙作の中では董の華都では親から字の手ほどきを受けるという設定にしております。


 この『図説中国文明史』シリーズは歴史や日常生活を構成するさまざまな「モノ」を各巻400点ものカラー図版で紹介してくれるので、中華ファンタジーを書くのに役に立つのではないかと思います。


 この箇所では「千字文」の図版も載っていますよ!

 習字の手本であり、日本に伝わったことも記載されています。


 下記の記事で紹介しております。

 ↓

「イメージづくりに役立ちそう!『図説中国文明史』シリーズ」

https://kakuyomu.jp/works/16817139556995512679/episodes/16817330658998979473


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 白蘭は、雲雀を人買いから助けただけでなく、授業料を貰っている分きちんと教えなければと思っており、そして今回の場面のように食事を放ったらかして背後から手を添えて教えてあげます。

 面倒見の良い女の子なんですよ。


 それを見ていた冬籟も「俺が代わろう」「あんた、羹が冷めちまったぞ。。女将に温め直してもらって、今度は冷めないうちに食ってしまえ。その間、俺が雲雀に筆の持ち方を教えてやるから」と申し出ます。


 冬籟もなんだかんだで気遣いの人なんです。


 さて。この白蘭と冬籟たちにはどのような出来事がふりかかってくるのか。

 それに対して彼女、彼はどう立ち向かうのか。

 どうか最後までご愛読くださいますよう。


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