第2話 中国古代の衣服など

 このエッセイは鷲生の中華ファンタジー「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」の「あとがき」です。

拙作のURLはコチラです→https://kakuyomu.jp/works/16817330658675837815


 第一話から登場している冬籟はなかなかの美青年という設定です。

 体つきも細マッチョな感じです。

 そして、それとわかる細身仕立ての服を着ているとイメージしています。


 中国に限らずアジアの服は、今の洋服のように立体的に裁断しないのであまり体のラインが外にわかりません。

 それに広くゆったりとした衣服を尊ぶ傾向もあります。


 一方、北方の遊牧民は馬に乗るので機能的な服を着ていました。

 第一回で冬籟の服装を遊牧民風だと書きましたように、冬籟が来ているのもコチラです。だから手足の長さがばっちり分かるんですよ~。


『イラストと史料で見る中国の服飾史入門』(2023 マール社)という本から「《細身で筒袖のニューモード》」の箇所を抜粋しておきます(54頁)


「中国古代の服飾は『上衣下裳』から『深衣』へと発展し、広くゆったりとして服装を尊ぶ傾向にあった。そうした服装は、優雅で豪華な趣を表現するには適しているが、日常生活や労働には大変不便であった」


「遊牧民は、牧畜による生活が主であるため、乗馬は習得しなければならない基本的な技術であった」


「馬に乗る場合、衣服は身体にフィットした短い上着とズボンでなければなならず、そのため北方の少数民族の衣装は細身で筒袖のスタイルがほとんどであった」


『イラストと史料で見る中国の服飾史入門』の中で冬籟の格好のイメージに一番近いのは56頁の隋代貴族男性の服装です。

 丸襟で缺胯袍です。そしてこの図と同じくブーツをはいていることになっています。


 当時の武官の服装がこうだったという設定に加え、冬籟が動きやすい服を好むので、袖やズボンはかなり細身に仕立ててあるということにしております。

 それが冬籟の長身で手足が長い身体によく似合ってるんです、鷲生の妄想の中ではw


 一方で、これから白蘭は皇帝にお会いするのですが、皇帝陛下はゆったりとした大きな袖の服を着ています。交領で袖もズボンも幅広なものです。

 こちらの皇帝陛下も冬籟とはタイプの違う美青年なんですよw 


 中華ファンタジーの資料を探すにあたって、2023年4月に『イラストと史料で見る中国の服飾史入門』が出版されるまで、なかなかコレという本に出会えずもたついていました。

 ホントこの本が出てくれて助かりましたよ。ただ、この本が出版されたころには、鷲生は今回の拙作「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」」の大半をかきあげてしまっていたので、あまり役立てることができませんでした。もうちょっと早かったよかったのにと思ったりもしますが、仕方ないですねw


 中華ファンタジーの衣類に関する資料を求めていろいろ書き綴ったエッセイが下記の文章です。

 ↓

「避けて通れぬ衣装・服装の資料『中国服装史』『中国服飾史図鑑』+”日本の古代”」

 https://kakuyomu.jp/works/16817139556995512679/episodes/16817139557087514050

(※2024年10月29日追記

中華ファンタジーに使えそうな本を3冊新たにご紹介しております↓

「中華ファンタジーにもとても!参考になる古代服飾についての本3冊をご紹介!」

https://kakuyomu.jp/works/16817139556995512679/episodes/16818093082233149739 )


 冬籟が佩玉を持っている件について……。


 この『中国の服飾史入門』を読む前に、『中国服飾史図鑑』(2018 国書刊行会)をパラパラ見ていて、「いろんな玉が装飾品に使われてるんだな」と印象深かったので、冬籟も腰にぶら下げているということにしています。


 武官が外を見回る際に身に着けてるかどうかちょっと疑問ですが。

 市井を見回ってる最中に何か財貨が必要になったときに備えて、なにかちょっと高級な品物を持ち歩いているという設定にしておきます(紙幣とかありませんしね)。

 ↑

 ここで白蘭に褒美を取らせないとイケマセンしw

 ええ、物語の都合ですw


 作中に「双輝石」というものが出てきます。

 これは宝石の「アレキサンドライト」をモデルにしています。屋外と室外で色が変わる宝石です。

 ダイヤモンド以上に真贋が分かりやすい宝石ですね。


 白蘭が助けた少女は字の読み書きができません。


『大唐帝国の女性たち』(1999 岩波書店)という本によれば、唐の時代は女性の識字率もそこそこ高かったようですが。

(たとえば194頁「村の農婦から、女仙人、女幽霊に至るまで皆よく文章や手紙を書き詩をものしない人とてなかった」など)


 この少女については別の事情があって、字が読めません(この事情は次話以降に語られます)。


 識字率が高い社会で字を読み書きできないと社会的には劣位に置かれがちです。

 白蘭もそれをよく認識しているので、ここで少女に字を教えることにしましたし、白蘭が彼女に字を教えていくことがこれからの話の展開にもかかわってきます。


 白蘭は今回述べましたように、西妃の護符につかわれていた「双輝石」に絡んで、皇帝に自分の有能さを認めさせようとしています。


 西妃の護符が偽物だと何がどうマズいのか、そして白蘭の「野望」は何なのか。

 これから明らかになってまいります。

 冬籟に「小娘」呼ばわりされてカチンときている白蘭が、ひとかどの女商人として活躍していきますので、どうか最後までご愛読くださいますよう。


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