中華ファンタジー「後宮出入りの女商人」の資料や独自設定など。

鷲生智美

第1話 四神と物価などについて

はじめまして。

他の作品を既にお読みの方には、あらためまして、鷲生智美と申します。


このエッセイは拙作中華ファンタジー「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」のあとがきです。


その拙作はコチラです→

「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」https://kakuyomu.jp/works/16817330658675837815

第1話「女商人、少女を買う(一)」

https://kakuyomu.jp/works/16817330658675837815/episodes/16817330658676889443


こちらのエッセイでは、拙作のどこをどの資料を参考にしたのか、どこが独自設定なのかなどについて綴っていきたいと思います。


まずはサブタイトルに入っている四神です。

今ではゲームや小説などで常識のようになっている、四方の方角を守る霊獣です。


鷲生の「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」では、これらが実在するという世界観です。

(ですから架空世界の「ファンタジー」です。どうか歴史警察の方はこの点をご理解くださいますよう……)。


鷲生は京都に住んでおり、平安京が四神相応の地であることを意識して建設されたという知識が身近ですので、今回の中華ファンタジーに取り入れました。


今は多くの人に知られている四神ですが、鷲生が大学受験したウン十年間には歴史オタクくらいしか知る人がおらず、関西の某大学文学部の日本史の二次試験で出題されたものですw


さて。

この四神について鷲生が手元で眺めているのはキトラ古墳に描かれたものです。


中華ファンタジーを書くにあたって、日本で中国の影響が大きかった奈良時代を参考にしようと、なるたけ奈良の平城宮跡歴史公園にお出かけしております(京都から近鉄電車に乗ってw)。


その平城宮跡歴史公園の展示館(「平城宮いざない館」)のお土産物売り場で、キトラ古墳の四神の絵がついているグッズがありましたので、絵葉書とクリアファイルを購入しました。

モチベーションアップのため机周りに飾っております!


あと、2023年1月に開かれてた美術展で、朝鮮半島の古墳の四神図の精巧なコピーが展示されていたのでそれもじっくり見てきました。高松塚古墳とよく似てました。

(東本願寺渉成園『こうりん ークローン文化財 上洛ー』展 https://www.higashihonganji.or.jp/news/shoseien/46243398/ )


玄武、朱雀、青龍はイメージどおりなんですが、白虎があまり「虎」という感じがしないですね。胴体と首が長く龍みたいですw。青龍とあまり見分けがつかないというか。


拙作でも終盤に四神が姿を現す場面が出て参ります。


*****


今回は西域から来た女商人の白蘭が、売られかかった少女を保護するというお話です。


その対価をどう設定するかちょっと迷いました。

書き始めの頃は古代中国の物価について知識が全く無かったので貨幣3枚分とか、今思えばありえない描写をしていたんですよw


拙作は大体「唐」の時代をイメージしておりますが、秦漢時代については、柿沼陽平さんの『古代中国の24時間』という本があります。


そこにこの時代の物価が記載されており、「奴隷は一万五千銭」なのだそうです(168頁)。


※この本をエッセイで紹介しております。

「日常描写の手引きに役立ち、著者の学者先生のキャラが楽しめる『古代中国の24時間』」https://kakuyomu.jp/works/16817139556995512679/episodes/16817330647953427843


拙作「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」では、少女を買い取るのに、「銅貨1万枚は下るまい」とされる翡翠の原石2個と「帝室に献上しようとした逸品」の3つを白蘭は支払います。

銅貨一枚が一銭として、一万五千銭よりもぐっと大きな額です。


私は拙作を書きながら中華ファンタジー資料本に手を広げて来たのですが、わりと後の方で森安孝夫さんの『シルクロードと唐帝国』という本を読みました。


著者の方が何人かの先行研究をまとめた結果(248頁「奴隷売買文書を読む」)、そこでも普通の奴隷が銅貨1万~2万文とされています(一文=一銭=一枚のようです)。


高級奴隷はもっと高いですが、今回、白蘭もまずは普通の売買だと思って介入するので、やっぱり逸品を含む3つの翡翠原石は思い切った出費ということになるかと思います。というか、そういう設定ですw


この少女を買うように依頼したのは誰なのかは拙作の後半に出てきます。確かに大物なので、今回登場した人買いにとっては断りにくい筋からの依頼です。

そんな大物からの依頼を受けた人買いを翻意させるのですから、白蘭の支払った額も大きいんですよw。


この先、白蘭は「お金にシビア」なキャラとして振る舞いますが、この少女を助けるのにかなりの高額を支払うほど義侠心の強い女の子ですし、決断力や豪胆さもある女商人です。これから最終話まで活躍しますので、どうぞ今後ともよろしくお願いします。


于闐ホータン」はシルクロードに存在する地名です。

玉の原産地です。

あ、白蘭はサマルカンドに住んでいるコーカソイドの少女だという設定です。


この辺も、森安孝夫さんの『シルクロードと唐帝国』を読んでイメージを膨らませました。

シルクロート交易を担ったソグド人について「ソグド人でソグド人でソグド人なんですっ」という著者のアツイ思い入れのこもった書籍ですよ。


今回の拙作では最後に武官が「北衙禁軍の将軍」だと名乗ります。

唐の皇帝の新鋭部隊の長官という感じの立ち位置です。


氣賀澤保規さんの『中国の歴史6 絢爛たる世界帝国 隋唐時代 (講談社学術文庫)』で読んで知ったという記憶がありますが(スミマセン、今部屋の中で行方不明になってますw)、有名な項目ですので他の歴史書でも出てくると思います。


中華ファンタジーでは白河紺子さんの『後宮の烏』にも出てきますよね。


この北衙禁軍将軍の冬籟と白蘭とでお話が進んでいきます。

今のところ全43話となる予定です。

どうか最後までご愛読賜りますよう……。


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