第20話 Happy days(20)
「高宮さん。 ようこそいらっしゃいました。 おかげさまで何とかオープンにこぎつけて、」
ホテルに行くと支配人が高宮に丁重にお辞儀をした。
「いえ。 本当にいいホテルになりましたね。 従業員の皆さんもすごくきちんとしてて・・」
北都が倒れてから、このホテルのオープンのことは高宮と真太郎で何度も足を運んで頑張ってきた。
真新しいホテルの様子を見て感無量だった。
支配人は後ろにいる夏希に気づき、
「あ・・奥さま、ですか。」
と、言った。
夏希はぼーっとホテルの中を見回していたので高宮は慌てて彼女のコートの袖口を引っ張った。
「えっ! あっ!! はい! か、加瀬・・じゃない! た、高宮です!! はじめまして!」
コケそうなほど慌てふためいている彼女に、
「は、はじめまして。 支配人の高橋です。 高宮さんには本当にお世話になりまして・・」
彼もひきつった笑顔を浮かべた。
あまりに丁寧にお辞儀をされたので、夏希も慌てて勢いよく頭を下げた。
「すっごいステキなホテルですね~~~~。 もう見とれちゃって。 こじんまりしてるけどあったかくて。ホテルだけど・・旅館みたいな。 景色もよくって、」
夏希がそう言うと
「オープンしたらぜひ奥様といらしてください、とお話していたんです。 休みもなく仕事ばっかりで全然遊びに出かける暇もないっておっしゃってたんで。」
支配人はニッコリ笑った。
「や、まあ・・ほんと。 専務と二人慣れないことばかりで。 時間が掛かってしまって。 こちらにも色々ご迷惑かけて・・」
高宮は恥ずかしそうに苦笑いをした。
窓からキレイな夕焼けが見えた。
「窓なんか開けたら。 寒いよ、」
高宮がそれに見とれる夏希の横にやって来た。
「隆ちゃん。 ありがと。 ここに連れてきてくれて。」
思いかけない言葉に
「・・夏希、」
高宮は笑顔の彼女を見る。
「隆ちゃんが頑張って。 一生懸命仕事して。 こんなにいいホテルができたんだね、」
「おれは。 別にそんな。 みんな頑張ったんだよ、」
少し照れて目をそらす。
「あたし。 ヒマなんだね。 だから余計なこと考えちゃう。 隆ちゃんみたく忙しかったら・・子供のことばっかり考えてらんないもん。」
子供みたいな彼女の笑顔が
本当にすごくホッとできる。
「・・ありがと、」
夏希はもう一度そう言って高宮に抱きついた。
それが嬉しくてぎゅっと彼女を抱きしめた。
赤ちゃんは
きっと神様がいつかきっと
あたしたちのもとに預けてくれる。
くだらないケンカをしたりしても。
それまで
二人でのんびり暮らそう。
My sweet home~恋のカタチ。20 --rose red-- 森野日菜 @Hina-green
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