呼ぶ首 三

 親戚の女の子が自宅で雨合羽の女を見た翌日は仕事だった。

 仕事から帰り、家族と顔をあわせると暗い表情だ。

 何かあったのか訊くと、僕が出勤したあと、僕の部屋から女性の話し声が聞こえたのだという。

 テレビの消し忘れかとも思ったが、そんなことはないだろうと思い直したらしい。

 僕が書くのも変だが、僕には少し強迫神経症的な一面があって、電源の消し忘れなどは何度も確認してしまう。テレビをつけたまま出勤したことなど一度もない。

 家族はドアのまえで数分、聞き耳を立てていたという。

 確かに聞こえる。

 もしかしたらスマホで録音できるかと試してみたが、さすがに声は入らなかったらしい。

 前日の女の子の件もあったので怖くなり、ドアを開けることは出来なかったという。

 僕が帰宅する数十分前まで女の話し声は聞こえていたと彼女は語った。

 いま、僕が思うことはひとつだ。

 お前はどのときの、誰だ。

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実話怪談 冬虫脳談 カタオカアツシ @konoha1003fuyu

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