第98話 親としての覚悟が足りない?

幼いと言える少女と結婚して子供まで産ませてしまった私だったが、実は、私達夫婦のお互いへの期待値の差があった(特に妻から)。18歳と10ヵ月で母となった妻は4歳も年上の夫である私に、もっと大人らしい行動を期待していた。つまりは、もっと年上らしい落ち着いた行動をして欲しかった。私は逆に、妻と自分がそんなに年齢的に変わりはないと思っていた為、私たちは同じ行動でできれば良いと思っていた。妻が、日本なら未だ高校三年生である年齢で結婚して、その9ヵ月後に母となった(未だ若すぎた)事を忘れていた私だった。男女(父親対母親)の差も、妻を時には呆れさせる理由となった。


前にも書いたが、私は、親としての自覚が足りなかったと思われていた。息子が2歳の頃、普段から私と遊んでいた時の様に、義母が安全に捕まえてくれと思って、平気で高いところからジャンプして、義母が腰を抜かしながらなんとか奴をキャッチした時。乳歯が生えてきた息子に私の指をティージングリングとして噛ませて遊んでいたら、同じことを妻にしてしまった事等、私がとんでもない事を教えていたと知った妻は、私への信用が激減してしまった(子育て関しては)。私が、妻の幼い弟達と変わらない、いや、弟達より信用できないかも知れないと、妻は悟ってしまった。


私に好き嫌いがない様に育て様とした私の母に嫌いな食べ物を無理矢理食べさせられた経験があった。それに反発して、息子には嫌いな食物を無理矢理食べさせる事はなかった。妻が作った料理を息子が食べなかったり、食べたくないと言うと、私が別の料理を作って食べさせていた。これは、今でも苦情が出る。嫁と姑の関係で余り気の合わない妻と息子嫁の2人が、これに関しては、揃って私が息子を甘やかしたと同意する。私は意識していなかったのだが、昔、知らないうちに、かなり甘やかしていた様だ。その頃の妻も、自分の料理の腕が余り良くなかったと言う自覚はあったらしいく、余り反発はしなかった。しかし、今は、私を攻撃する材料の一つになっている。


確かに、息子は色々な食物が嫌いだった。今でも、マヨネーズを食べない。息子が学校に持って行くランチを妻が作る時、サンドイッチには、マヨネーズなしのマスタードだけか、何も塗らない「ドライサンドイッチ」をリクエストしていた。(これに、味海苔を一緒にランチバッグに入れて持って行っていた。もちろん、スナック、フルーツとか野菜も一緒に入れてあったが食べたかどうかは定かではない。)普段は、スーパーで買ったトマトは食べなかったのだが、友達の家の家庭菜園で取れたトマトは食べてくるアホな奴だった。友人の家族から、このトマトはスーパーのトマトの味とは違うと言って騙されてしまったのだ。グリーンピース(えんどう豆)が大の苦手で、ある会食で出てきたピラフを食べるつもりで、椅子の上で前のめりで、ピラフに手を出そうとして、グリーンピースが入っているのを見て、椅子から転げ落ちてしまった事は、今でも私の同僚に会うと揶揄われている。Oh, peas!


学校で使う鉛筆についている消しゴムを咥える癖があったのに、エビは食べないので、私がいつもエビの方が柔らかくて美味いと揶揄っていた。しかし、日本へ行ってから、ある偉い先生の奥様のご自宅であったバーベキューに招待され(一人で行った)、エビではなく、蟹を食べることを覚えて帰ってきた。蟹もエビに似た味と食感だと思っていたらしく、食わず嫌いだったのだ。これと、牛叩きの鮨とマグロのトロの味が似ていて、唯一食べられる生の魚だった時期があった。クルクル寿司へは行きたくない息子が、妻に無理矢理連れて行かれ、食べていたのが、河童巻き、タマゴの握りと牛のたたきだけだった。しかし、この2つの出来事の後は、蟹とトロがレパートリーにが加わってしまい、毎回大出費になってしまった。トロを勧めたのは私だが、蟹の方は、あの先生の奥様の実家に行かせなければ良かったと思っていた。そして、息子は大食漢へと成長していった。https://kakuyomu.jp/works/16817330659296751062/episodes/16817330661148627452


息子の成長と共に、妻と息子には、私が科学の話を始めると長くなるので、出来るだけ話題にはしない様にしようと言う暗黙の了解があった。スポーツでは冷静なのに、息子の武道の訓練になると、厳し過ぎる。数学の話は、宿題が分からなく、助けが必要な時以外は絶対にしない(息子だけでなく、短大を卒業後、四年生大学は編入した妻も時々数学の助けてが必要となった)。普段は、息子が親のことをアホとかバカと呼んでも全く起こらない、逆に、いつも悪い言葉(例えば。Fで始まる言葉やGで始まる言葉)を子供の前でも平気で使う。初雪が降ると、家族を叩き起こして、アパートの近くにあった巨大な丘へソリ滑りをしに、朝飯前に連れて行った(学校のある日でも)。大雪が降った夜に、幼い息子をソリに乗せて、雪が深過ぎて、車が通れなくなった近所の道路をひっぱり回したり、子供みたいに遊んでいた事もあった。勿論、空手との稽古ではアザだらけになって帰ってくるし。テコンドーの韓国人師範代と、-40℃の体感温度の日に、上半身裸で寒風摩擦をしたとか。妻には、この男は余り父親としての自覚はないと思えるように見えた。


年上で、頼りになる男と思っていた夫は、社会的常識に反しての行動が多く(社会の常識を知っていても)、精神年齢は、自分よりも低い部分があるかもしれないと悟った妻は、息子へ常識を教えるにのは自分なのだと自覚しだした。この夫は、頼りになる事も多いが、信頼しない方が良い事も多いと思った。父親の私としては、これらの多くは、私の思想に基づく、考えての行動だったと言っておきたい(言い訳か?)。親ではなく、兄弟・友人の様な関係を望んでいた。常識破りの行いにしか見えなかった妻には、余り効果はなく、少女は、早く大人にならなくてはならないと感じていた。


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