第18話 息子の大食い伝説
うちの一人息子は、色々と黒歴史を残しながら育った(父親のせいだと言うのが身内の統一意見であるが)。その中でも、日本でインターナショナルスクールに通っていた間の暴食がすごかった。私も、高校生の間は、弁当を二つ持って行き、2時間目が終わってから一つ目を平らげ、昼は食堂で、うどんとかカツ丼を友人たちと食べ、授業が終わってから2つ目の弁当を食べてから部活をしていた。部活の後、帰宅途中に、お好み焼き屋に寄って一枚食べることもあった。帰宅後は、毎日、家族と普通に夕飯を食べていた。
息子は幼い頃は、少食で、妻が、息子の小児科医に苦情を言っていた。そんな息子も日本へ移転したころから、よく食べる様になった。地元の米国領事館は、一年に一度、インターナショナルスクールの生徒全員を昼食に招待してくれていた。毎回、カレーだったようだった。その昼食会の後、米国領事が私たちに話しかけて来て、通常は、領事の家族が残ったカレーを夕食として食べていたが、私の息子がお変わりしすぎて、カレーがなくなり、別メニューになったと告げられた。カレーがなくなったことは今までに一度もなかったとも言われた。肩をすくめて、He eats a lot. What else can I say? 「うちの息子はよく食べます。それ以外に、何もいえません。」と言う他なかった。
ある日、時間制限の食べ放題のビュッフェで、クラスメイトが集まって食事をしていたが、皆、最初の1時間で満腹になったらしい。しかし、息子は物足りず、追加料金で30分の延長をした。すると、他のクラスメイトも同じ時間いたと言うことで、延長の追加料金を払わされたらしい。皆、息子を見て苦笑していたり、頭を横に振っていたそうだった。
他にも、焼き肉とかトンカツのチェーン店で、麦飯食べ放題というのがあったが、息子が行くと、お変わりしすぎて、何度も麦飯がなくなったと言われてしまった。隣のテーブルでは麦飯を食べている客がいるのを見て息子が文句を言い出したこともあった。最初に起こった時は、アメリカ人らしく、訴えろと言い出した。日本では、こんな些細なことで訴えれない(というか、それは世界水準だろう。米国水準がおかしいだけだ)と説明しておいた。米国は銃社会と言われているが、訴訟大国でもある。世界中の弁護士のうちの2/3が米国にいるらしい。
私達の住んでいた地域では、ラーメンの替え玉はひと玉50円だと知った息子は、学校が終わって、よく寄ってから帰るラーメン屋で、替え玉を5−6個注文していたらしい。最後の方は、スープは無くなるので、タレが醤油差しのような容器入れてあるのだが、ラーメン屋の大将が気を使って、スープをおたまで注いでいてくれていたらしい。これを聞いた妻は、恥ずかしくて、このラーメン屋にはいけないと言った。
私たちが引っ越した家の近くにコストコがオープンしたので、大食漢がいた我が家はとても助かった。オープン当時は、一品あたりの大きさに慣れていない主婦達が、ご近所で、共同購入してから分け合うしかないと言いながら見て回っていのを何度か目撃した。その横で、あのでかいショッピングカートに食品を次から次へ投げ込んでいく息子の姿があった。それでも、うちの冷蔵庫はすぐに空になっていた。ある日、妻と私が帰宅すると、息子が、冷蔵庫の中に残っていたのがキムチとハンバーガー用のバンズだけだったので(両方ともコストコで購入)、キムチサンドイッチを作って食べたと言った。おかげで、冷蔵庫は調味料系を除いては完全に空になっていた。その夜は、外食だった。
もう一つの息子の大食い逸話。ある日、息子が牛丼の持ち帰りを三人分持って帰ってきた。それを見た妻が、息子が家族全員のために牛丼を買って帰ってきたのだと勘違いして、なんといい子だろうと感動していたら、三人前を全部一人で食べてしまった。息子の食欲を知っていたはずなのに、妻は自分が勘違いをしてしまったことを嘆いていた。母親泣かせの息子だったが、もし私が同じことをしていたら、今、私は生きていないと思う。
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