第17話 「叔父さんゲイなの?」息子の爆弾発言

これは息子が13歳になったばかりの時の話。お盆休みで、東京で働いていた弟が実家に帰省してきた。私たち一家はすでに帰省していて、両親と祖母と二日ほど過ごしていた。その間に、帰省してくる弟のお見合いについての話題が両親と祖母の間で何度か出ていた。もう30歳を楽に超えていた弟が10回以上のお見合いをしたのに、全て断っていたという話を何度も聞いた。次のお見合いをいつできるかと悩む父と祖母に対して、母は弟の好きな様にさせておくべきだと意見の違いがあった。それを聞いていた息子と妻には、じいちゃんとばあちゃんが弟のことで言い争っているのかは要約して英語で話しておいた。ついでに、弟にはガールフレンドもいないらしいと告げておいた。


やがて、弟が帰宅して、家族全員で昼食をとった後、息子は弟にじゃれついていた。私とじゃれつくと、関節技とかで痛めつけられるが、弟はそんなことをしないので、ここぞとばかり弟と遊んでいた。一息している間に、息子が弟へ向けて、「Uncle 〇〇, are you gay? おじさんはゲイ(同性愛者)なの?」と、爆弾発言をしてしまった。それを聞いた妻は思わず空いた口を手で隠していた。私は笑い転げていた。他の家族は息子の言った英語の意味はわからなかったが、弟は理解したので、「No.」と返事をした。息子はさらに「Why don't you have a girl friend, then? (それなら、なんでガールフレンドがいないの?)」と追撃した。弟は「ゼイ ドント ライク ミー。They don't like me.(もてないだけだよ。)」と返事をした。私が、弟は選り好みが激しいだけだと、英語で説明しておいた。しかし、相手は了承していたのに、弟が何度も見合いを断っていたことを私から聞いていたので、息子のは疑いはまだ残っていた。お見合いがどう作用するかは、息子も余り分かってはいなかった。


両親と祖母に、二人の会話を翻訳して告げると、驚きながらも半分笑っていた。家族の前で、こんな無礼なことを叔父に聞く息子を育てた私に、母は「バカ!」と言いながら、また私の腕を叩いてきた。息子が何かしでかすと、いつも私が「バカ」言われて、母に叩かれる。自分のことから話題を変えるためか、弟がまた、「誰の子?」と言って私をからかってきた。


ずっと昔、6歳の息子が、私をバカと呼んで叩く母を見て、「お父さん、バカない!」と母に叫んだので、母が目を丸めて驚いたことがあった。私が戯れついてくる息子を投げ飛ばして、息子が泣き出したので、母は、息子のために、私を怒っていたのに、息子は私の側に付いてしまった。その頃、息子は日本語はほとんど話せなかったが、父親をバカ呼ばわりされて怒ってしまった。私は、息子との戯れ愛で、泣かせてしまう大人気ない父親だったのに。正直、兄弟の様に思って育ったと思う。


ちなみに、この10何年か後、弟は無事に結婚して、その後、息子も生まれたのであった。15歳くらい若い奥さんをもらった。



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