エピローグ

 そしてあたしたちは、あらためて祝言を挙げることが決まった。


 娯楽がないなら作ればいい。それは、お祝いごとにも共通しているみたい。


 問屋さんの店舗経営者は、その日のうちにお静さんにゆだねられた。お静さんは文句を言っていたけれど、薬のせいとはいえ、あたしたちが酷いことをされたのは事実だからだ。


 けれどそのお静さんも、たまにはお城に顔を出してくれるようになったし、毒物が仕込まれている着物や反物なんかもすべて燃やした。もったいないけど、それはしょうがない。


 そしていよいよ、イッシーさんからあたしと太郎さんの検査結果が出たのです!! 果たして、赤ちゃんは!?


「うーん? お二人の遺伝子は、なぜだかよく似ているので、健康な赤ちゃんが産まれることでしょう。多少の術は使えるかもしれんな。それはそうと、もう手遅れだがな」


 イッシーさんは、少しお腹がぽっこりふくれているあたしに、よかったのぅと笑ってくれた。


 いつかの誤解も、全部思い出したから、だからもう、それでいい。後腐れなくがいいんだ。


 お腹に赤ちゃんがいるから、あまりむやみに動けないけれど、手芸教室一号店と二号店共に、受講者がたくさん来てくれて、とても繁盛している。女中さんたちまで先生になっちゃった。


 お客さんも本当は、反物問屋さんの高い着物より、動きやすくて安い生地の服をたくさん作りたかったのだという。


 いかに問屋さんの権力が強かったのか、よくわかった。


 今日も教室はいい感じで、笑いの絶えない素敵な一日を送ることができる。それがなによりしあわせで、贅沢なことは、あたしが知っているから。


 なにがあっても、手芸は裏切らない。それを深く実感しているが、太郎さんも絶対にあたしを裏切らない旦那様なのです。


 おしまい

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狐に嫁入り!? 冴えないOLが異世界で手芸を広める! 春川晴人 @haru-to

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