第10話 テスト

月曜日。

予定通り学校が始まった。


「なんでもあのドラゴンダンジョンから出てきたらしいぜ。大変だったよな」


そう言ってくる黒木に答える。


「表向き、はな。奴らの考えそうなシナリオだよまったく」


ドラゴンからダンジョンが逃げ出した?

そんなわけは無い。


「ダンジョンからドラゴンが逃げ出すなどありえない。あれは仕組まれたドラゴンの襲撃だったんだよ。だいたいお前だろ?あの地は選ばれたことを話してくれたのは」


そう言ってみると黒木は話題を変えてきた。


「ところでお前今日から試験始まるけどどうすんの?」

「試験?」

「忘れてたのか?実際のダンジョンに向かってその攻略の成績を教師が採点するというテストがあるだろ」

「あぁ、あれか。どうもこの世界の生活についてはまだ慣れていなくてな。ときどき記憶が混濁の海をさまようことがあるのだ」

「まぁ、とりあえず覚えていたようで安心したよ」


そう言う黒木と俺は学校に向かっていった。


俺がクラスに入ると山口が絡んできた。


「おーっす桜井」

「あはは、おはよう。山口くん」


俺は今日もいじめられている哀れな学生を演じる事にした。


こうしていじめられて弱々しくしていると誰も俺を世界最強の人間だと思わないからな。


「ちょっと話聞いてくれや桜井」

「なんの話?」

「テストあんだろ。テスト」

「きょ、今日から始まるらしいね」

「それでよ。俺とお前同じパーティらしいんだよ」

「それが?」

「白けるからよ」


ブン!

俺を殴ってきた。


「あー。スッキリー」


そう言って歩いていく山口。

そのときだった。


「だ、大丈夫?桜井くん」


俺に誰かが話しかけてきた。

そちらに目をやると我らのクラスの委員長の生田が立ってた。


「いつもいじめられてるみたいだけど、先生に言ったりしないの?」


そう聞かれて答える。


「先生に報告、か。むしろ俺が報告されてないか心配になるくらいだが」

「え?な、なんの報告?」

「俺が闇の世界の人間だって報告」

「や、闇の世界の人間?」


そう聞いてくる委員長の前で俺は1枚タロットカードを引いた。


「太陽の逆位置」

「なんでタロットカードなんて持ってるの?」

「それ以上俺には関わらない方がいい。待っているのは破滅だ」

「質問には答えてくれないんだね?」

「答えると君に不幸が待ち構えることになるからだ」

「タロットカードそんなに重要なの?」

「神の啓示だからな」


俺はそう言って自分の席に向かうことにした。


1時間目から聞いていた通りテストの話をされていた。


今日はどうやら通常授業が行われるワケではないらしくこのテストに向けての説明が行われたりテストに向けての対策が行われるようだ。


そしてその説明会なんだがパーティメンバーと固まって受けるらしく、当然俺は山口と受けている。

めっちゃ近くに山口がいる。


「えー。実際にテストで使うダンジョンはここからすぐ近くにある鉱山ダンジョンという場所になります。ですがこのダンジョンですが難易度がふたつあります。使用するのは低難易度の方です」


そう言っている人の言葉を聞いて山口が言ってきた。


「んじゃ俺らは高難易度の方行かないとな。なぁ桜井くん」


その言葉を聞いて委員長が山口を注意した。


「やめてよ山口くん。冗談でも言っていいことと言っちゃいけないこともあるよ」

「はっ。めんどくせー女」

「あなたが悪いんでしょ」


さっそく俺たちのパーティの仲は良くないものになっていた。


俺としてもこのまま不仲な方に進んでいくのはよくないと思うので口を挟んでおこう。


「委員長。山口くんの言う通りだ。みんなが簡単な方を進む中俺たちだけが難しい方へ行けば俺たちの評価は上がるだろう」


それに委員長たちはラッキーだろう。


裏世界最強の座に君臨する俺とパーティを組めているのだ。

難易度の高いルートだと問題は無い。


そう考えると山口は俺と同じクラスであったことを光栄に思うことだな。


(くくく……血と鉄と錆のにおいがするな)



そうしてダンジョン前までやってきた。


俺のパーティは山口と俺と委員長とそれから名前も知らない女の生徒だった。

山口と馴れ馴れしくしてるあたり山口と仲のいいやつなんだろう。


「おいオタク配信の準備はしとけよ」


このダンジョンを使ったテストだが配信をすることが義務付けられている。


事故の防止や採点に使うためだ。


その準備をしておけと山口は言ってる。


「くくく、テストの配信用のアカウント名は【ブラックアラウンドザワールド】にしておこう」

「お前なんでそんな恥ずかしい名前思いつくの?」


山口が真顔で聞いてきた。


「恥ずかしい?俺はそんな事思わないけどね。覚えやすい名前というのは大事だよ山口くん」

「覚えにくいわ!」

(これだから単細胞のヤンキーは困る。こんな高尚な名前を理解できないとは。やはり俺は特別か)


そう思いながらも配信を開始した。


「では今からテストのための配信をしていきます」


まずそうやって宣言して


「桜井達也です」


と俺がちゃんと配信していることを口にしてそれから山口なども続いた。


それから所定の手順を踏んでダンジョン攻略を進めていくワケだが。


"おー。やってんねー"


コメントがついてた。


テスト用の配信にコメントをするのは禁止されていないから珍しいことでは無い。


いつもの癖でつい不遜なる話し方をしそうになるが、ここは礼儀とかの問題もある。

ていねいにいこう。


「見てくれてありがとうございます。なにか至らない点などありましたらご指導お願いします」


"あいよ。任せろ"


そんなコメントを見ながら俺は山口に目を向けた。


ニヤッと笑ってこう言った。


「うし。じゃあ行くか。高難易度ルートにな」


委員長がそれを聞いて口を開く。


「ほ、ほんとに行くつもりなの?」

「ったりめぇよ。なぁ?」


そう言って女に目を向ける山口。

名前はなんだっけ?


そう思ってたら山口が名前を呼んでいた。


「なぁ、川野?」

「そうよねー。山口がいれば余裕だもんねー」

「はははっ。よく分かってるなお前は」


そう言いながら山口は高難易度の方のルートに向かっていった。


「ちょ、ちょっと山口くん?」

「来ないなら置いてくぜ?委員長?そうなればお前留年かもなぁ。ははは」


そう言われて歯を食いしばって俺を見てくる委員長。


「桜井くんもとめてよ。無、無理だよ」

「風が、俺を呼んでる」


そう言いながら俺はタロットカードを引いた。

その絵柄は


「ば、ばかな……」

「何が出たの?」


俺はそのカードの絵柄をおそるおそる委員長に見せた。


「塔の正位置」

「や、やばいの?」


俺は頷いた。


「きっとこの先にはなにかがあるんだ。とびきりやばい事が。しかし、くくく、ははは。それが世界の選択だと言うのか!」


俺はそう言って山口の後をついて行く。

それを聞いて委員長はこう言った。


「も、もう!知らないから!」


もう戻れないかもしれない。

片道切符かもしれない。


しかし


「俺は負けない。組織に勝つまでは」






あとがき

周年来てたので某鬼ごっこゲーでプレステージあげてました。

あげ終わったのでここからはまたコンスタントに更新出来たらなと思います


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重度の厨二病の俺がダンジョンで美少女配信者を助けたら俺の知らないところで話題になってるそうです。美少女とコラボしたら一瞬でバズって世界トップクラスの配信者になってしまった にこん @nicon

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