罪と罰とオカピの夢

朝野鳩

二十首

春雷や告解室に蝶が居り罪の満ちたるなかを羽ばたく


オカピ語で寝言を言ったらしいから私はオカピの夢だと分かる


FMを拾うキリンの角だけが世界をひらく唯一の鍵


月面のロールケーキは中空でその身をひらくただのケーキへ


シーラカンス昔の歌をうたってよ泡になるまで声をあげるよ


石鹸は天使になりて底引に掛かったように蛇口にかかる


試し書きされた悼辞の文字だけが文具売場で正しくひかる


かろやかに冬は終わって母さんね喧騒に行かねばならないの


寝る前にカップスープの温度しか思い出せない夜だってある


バストイレ別でそれぞれワオキツネザルが成仏できずおります


あんなにも綺麗な犬歯だったのに矯正なんて君は悪魔か


つけまつ毛越しの電灯点滅す都営新宿線地獄駅


思い出の登場人物ふえる春死ぬときはみな一人きりでも


火星マーズ聞く映画のような夢の中 エンドロールのような木星ジュピター


浴槽に沈みジョークを泡にする ああ、最高の出来だったのに


文字がまた王や地獄や人生の代役をしているのうのうと


噛みかけのガムの形を最高の秘密のままにあなたにあげる


クーポンの期限はあした大予言によると星は滅んでるけど


地獄では風船売りが盛況で地球の感情ほどの流行


ひとり分だけのシーツの跡 ドライアイスのように昇華する夜

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罪と罰とオカピの夢 朝野鳩 @srkw

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