推理小説(ミステリー)の歌

ふるは ゆう

推理小説(ミステリー)の歌

散りばめたむくろを照らす星たちが 今、示したるほの暗き闇(占星術殺人事件)


流氷を背に傾きて建つ館 積もりし雪に全てを隠す(斜め屋敷の犯罪)


殺人の現場に掛けた数字錠合わせ開けば悲しき答え(御手洗潔の挨拶「数字錠」)


暴風雨 数多あまたのモノが打ち消され残る数字がすべてを語る(御手洗潔の挨拶「疾走する死者」)


青空に白き雲引く紫電改 青春の夢飛ばせ彼方に(御手洗潔の挨拶「紫電改研究保存会」)


橋影を見上げ縋った蜘蛛の糸 揺れる小舟の心細さよ(御手洗潔の挨拶「ギリシャの犬」)

     †     †     †


閉ざされし孤島にともる十角の館のあかりまた1つ消え(十角館の殺人)


めくるめく回り続ける水車みずぐるま消えし絵画は何を語らん(水車館の殺人)


迷い込むその迷宮の奥底にアラクネの糸答えを紡ぐ(迷路館の殺人)


人型の人に非ざるその視線 見つめる先に我という闇(人形館の殺人)


時を打つ時計の音に目を覚ます 交霊の夜君は何処に(時計館の殺人)


焼け落ちた記憶に残るその館 書き綴られし血塗られた過去(黒猫館の殺人)


耽美なり、耽美なりしかこの館 迷い込む霧 愛おしき人(霧越邸殺人事件) 


     †     †     †


襲い来る恐怖の中で消えかけた 復讐の火を再び燃やす(屍人荘の殺人)


予言とは動かさざれし運命か 人を縛りし悪しき呪縛か(魔眼の匣の殺人)


廃墟底 閉じ込められたそのモノは 人ならざりし 人だったモノ(兇人邸の殺人) 


     †     †     †


たどり着く答えを前に立ち止まる 悲しき答えの答え合わせ(氷菓)


この密室 決して解けない物語り わかっていたの貴方の気持ち(愚者のエンドロール)


     †     †     †


美しきその人の死はそれぞれの澱む想いを深く沈ます(私という名の変奏曲) 


あの頃に戻れはしないそれなのに 川の流れは笹ぶね揺らす(戻り川心中)

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