じゃんけん・歯の奥の蜘蛛

ラブテスター

二十首連作

じゃんけんで知らない手を出すような人を好きになりそれで別れた



メメントなモリにとらわれ冬掛けの布団の重さに負けそうになる



心筋が痛い気がして心筋苦タイムと思うひとり寝の夜



給食のおばさんやみどりのおばさんには帰っても家庭が無いと思ってた



条例が変わって今は持ってたらやばい写真集を置く場所



土地名をもじって付けたミニバスの名前がたまに卑猥に聞こえる



道端にハワイ土産のマカダミアナッツチョコみたいに寝てる黒猫



老人の両手の杖の片方がビニ傘でどうか雨降らないで



欄干に括られているマフラーがきのうの雨を記憶している



つかまったバッタは茶色い汁を吐く 尊厳をかけてぴょんぴょん逃げる



「はい、これ」と採血のあとの絆創膏はがして寄こす君はいじわる



多目的トイレに入り後ろ手にドアを閉めるとぬるりとしてる



恋人の歯の奥に蜘蛛を見たような気がした夏祭りの花火



あすけんの女には内緒だからねとアイスを渡された午後十時



とりあえず食べちゃっていい? 吉野家は彼女の愚痴を聞くとこじゃないし



離島にある雑貨屋の店先にある賞味期限のやたら長いパン



山形の友人の子には障がいが とりもつラーメン、愛をとりもつ



京葉線ビートたけしに似た人が志茂田景樹のいで立ちで居る



夏盛り 出したばかりの納豆が着崩すように早くほどける



さみしいとうさぎは死ぬし納豆は滲んだ涙が結晶となる

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