『王宮の歯磨きの音楽』

やましん(テンパー)

『王宮の歯磨きの音楽』

 

 『これは、フィクションです。』




 いだいなる国王、ハンダグラフ三世の長男は、歯磨きが嫌いであった。


 しかし、将来、りっぱな国王になるには、きらっとした、歯並びは重要事項である。


 そこで、いだいなる国王は、妙案を思い付いたのである。


 いま、王国内に住んでいる、当代最高の作曲家である、オグゲル・デルヘン氏に『歯磨き音楽』の、作曲を依頼したのである。


 デルへン氏は、快く承諾し、わずか一週間で、巨大な歯磨き音楽を作曲したのであった。


 その初演は、王宮の、王子様専用歯磨きの間でおこなわれた。


 500畳じきくらいの広間である。


 国王夫妻のは、歯磨き室だけで、その倍くらいある。


 さらに、天井は、我々の国会議事堂に匹敵する高さがある。


 その建物だけで、王室全員の歯磨き室がならんで、いるのだ。


 移動するだけで大変である。


 部屋の真ん中には、歯磨き場がひとつあり、そこは、もちろん、王子様専用であった。


 それを、総勢80人の王宮管弦楽団が、回りを取り囲んだのだ。


 指揮台には、もちろん、デルへン氏が立ち、国王夫妻は、歯磨き場の向かいに着座したのである。


 つまり、王子様のお顔が、すっかりと、見える位置である。


 音楽は、実に勇壮にして華麗。


 全体は5つの曲から成り立っていた。



        🎆🎆🎆



 ①序曲 (歯磨き台に王子様が立つ。)


 ②ブーレ- (王子様は、歯磨き台において、ダンスする。)


 ③世界の平和のために (王子様は、歯磨きの祈りをする。)


 ④歓喜に満ちて歯磨きを (王子様は、歯磨きをする。)


 ⑤メヌエット(歯磨き終わりの踊り。)



 以上である。

 

 時に、ハンダグラフ歴、1749年である。


 王子様は、あまりの大事に懲りて、歯磨きをきちんとするようになったという。


 即位してからは、戦争には手を染めず、世界の平和に貢献したとされている。


 その後、その音楽は、『王宮の歯磨きの音楽』として、世界に広まった。

 

  

    🎆🎆🎆🎆🎆🎆🎆🎆


参考


 ヘンデルさまの『王宮の花火の音楽』を、思い浮かべていました。



      🎆🎆🎆🎇🎇🎆🎆🎆

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