第2話 未来-FATE-

 はるま君が、記憶よりも大きくなって私の後ろに立っていた。声も身長も、あの頃から大分変わってしまっているけれど、顔には少しだけ面影が残っている。


「さくらちゃん! 久しぶり!!」

「ひ、久しぶり……」


 信じられない。本当にはるま君なのだろうか。私は、驚きすぎて口を半開きにして突っ立っている。そんな私の様子を見てはるま君はふっと笑った。


「びっくりした?」

「う、うん」

「なら成功、かな?」


 無邪気に笑うはるま君。あの頃から変わっていない。でも……。私の言ってほしい言葉は言ってくれない。他力本願じゃないけれど、これは私が言うよりも彼が言った方がいい言葉のはずだ。


 そうでないと、この気持ちに名前をつけられない。まだ、この名前で合っているのか分からないから。


 そんな風に私が考え込んでいると、隣でなんだかよく分からないという様子で見守っていた結芽ゆめが、口を開く。


「この人、咲樂さくらの友達?」

「う、うん。幼馴染みの、鳳凰寺遥馬ほうおうじはるま君」

「初めまして」


 軽く挨拶をする二人。少しだけ結芽ゆめと会話をした後、はるま君は私の方にくるりと体を向ける。


「どうしたの?」

「い、いや……」


 少しだけ、間が空く。少しだけうつむいているはるま君の顔が、赤くなっているように見える。


「さくらちゃん」

「は、はい!」


 背筋が伸びる。それにより、10cmほどの差が少しだけ縮まったように思える。はるま君の後ろに見える青かったはずの空は、いつの間にかオレンジ色に染まっていた。


「伝えたいことがあるんだ」

「う、うん」


 私は、はるま君の瞳をしっかりと見る。あのときと変わらない、優しい瞳。懐かしさで涙がこぼれてしまいそうだ。


 私は、こぼれてしまいそうな涙をなんとか奥の方に引っ込める。理由はよく分からないが、はるま君には涙を見られたくなかったのだ。


 はるま君の瞳は、私だけを映している。ここには結芽ゆめもいるはずなのに、気配が見当たらない。目で見て確認したかったけれど、あまりにもまっすぐにこちらを見ている瞳から目を離すことができなかった。


「僕……ね、さくらちゃんのこと……」

「うん」


 私は、小さく頷く。はるま君の瞳は、とても真剣だ。


「さくらちゃんが……あなたが好きです」


 そのとき。ぶわっと風が吹くと、舞っていた桜の花びらがさらにたくさん舞い上がった。


 はるま君に言われて、やっと気づいた。これで、この気持ちに名前をつけられる。


「私も……はるま君のこと、好きです」

「さくらちゃん、それって……!」

「これから、よろしくお願いします」


 私は、満面の笑みをうかべた。この気持ちの名前は……「恋」だ。はるま君は、私の運命FATEだったのだ。


 こうして、私たちは幼い頃からの想いを実らせることができたのだった——。





 その後、私たちは気配を完全に消して様子を見ていた結芽ゆめから一生この時のことをからかわれることになる。だけど、それも含めて毎日楽しく生きているから、良かったと思うことにしよう。


                              おしまい




*あとがき*

 ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

 今回は、咲樂さくら遥馬はるまの恋のお話でした。いかがだったでしょうか。

 純粋に恋愛だけを描いた作品を書くのはこれが初めてで、かなり表現に苦戦しながら書きました。それでもやっぱりダメなところがたくさんあります。

 表現についてのアドバイスや誤字脱字、感想などを教えていただけるとうれしいです。

 お読みいただき、本当にありがとうございました!

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幼き恋の運命 蔵樹紗和 @kuraki_sawa

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