世界とわたし

弥坂あおい

はづかしや恋のえのぐの裏うつり

春風や若きいのちのマリアージュ


白き手の映ゆ空わびし梅匂ふ


しめやかに水面にまどろむ花月夜


春愁のあさくわだけが声高に




まだ空は憂いをはらんで燕子花かきつばた


午後四時はさびしがりやの蚊柱と


おくれ毛のうなじに這ひたり制汗剤


二輪車といっそ涼風にならばや




天寿待つもみじと日めくりカレンダー


青年のまなこに秋の鴉棲む


めをと星あふ季節己が身かさぬ


意のままに空をきりさけ白鶺鴒はくせきれい




さざんかをほっぺに咲かす少女かな


おもむろにしづりし雪のとうとさよ


逆風にゆらぐあの子はかへり花


冬うらゝ酸素かみしめ眺む海




光芒こうぼうを纏うあなたはイカロスか


はづかしや恋のえのぐの裏うつり


塗りこめたふたえ瞼に潜む母


笑みだけでわたしを転調させないで

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世界とわたし 弥坂あおい @sea-otter

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