異世界に転生して殿下になった俺は全人類の救済を求めて奔走します
@tosei4
第1話 新たな始まり:一般社員から大富豪へ?
企業プロジェクトマネージャーとして働く俺に、デカい話が舞い込んできた。
「ほ、本当ですか!?このプロジェクトのリーダーが私に…?」
ユウジはデカい仕事を任せられたことに興奮しながらも話を聞いていく。
「このプロジェクトは当社の新製品の開発に関するデカい山だ。市場調査から製品の企画に設計、そして最終的に導入まで、全体の指揮を取るリーダーとなる。」
その責任重大な立場に緊張のあまり生唾を飲みながら頷く。
確かに責任重大で、失敗は許されない大仕事だ。しかしこれはチャンスでもある。
「既にこのプロジェクトに関わる人材は用意している。才能ある人物だけをかき集めた、どんな困難なプロジェクトでも成功に導けると話題になっている、ともっぱらの話だ。君がそのメンバーのリーダーとなるんだ。君に対する上層部の期待の高さを理解したかね?」
上が俺の思っている以上に自分に期待していた事に驚きながらも誇りに思う。
今までこの会社を良くしていこうと頑張ってきた自分の行動が認められたのかと。
そしてユウジは上層部が何故この仕事を自分に任せたのかを考え、理解する。
上からみて、俺の能力はこのくらいの仕事なら熟せるだろう、と判断したからだ。考えるまでもない答えだ。
任せられない、と思う人間にプロジェクトを丸々預ける、なんてことするわけがないのだ。
そんな信用してくれた人達に対する俺の返答は?
「わかりました、引き受けます。プロジェクトの成功の為に最善を尽くします」
「…」
上司はジッと自分の顔を見てくる。その何とも言えない圧迫感に仰け反りそうになるが、耐えながら上司の顔を見返すと。
「フッ…」
上司の顔が緩み、応用に頷く。
「素晴らしい、君の参加を心から歓迎しよう」
おもむろに手を差し出してきた上司の手をしっかりと握り、握手を交わした。
〇 〇 〇
プロジェクトは順調に進行していった。
ユウジが最初に取った行動は…プロジェクト参加メンバーと飲みに行くことだった。
もちろん、遊ぶ為じゃない。
各メンバーと話し合い、各メンバーの弱み強みを見極め、人柄を判断しチームの全体像を把握する為だ。そしてユウジはその一回の飲み会でほぼ全ての人の人柄と、その能力を看破した。恐るべき洞察力だ。
そしてユウジには他にも狙いがあった。
それは各メンバーが肩ひじ張らず、頑張りすぎないようにする為だ。
無理だと思ったら無理だと言ってほしいし、相談があるならどんな相談にも乗ってあげたい。
ユウジは過去のある経験から人に過度な期待をしないようにしている。
それは別に全く期待しないのではなく、意図して期待しそうになる自分を無理やり律している、と言っていいだろう。
そんなユウジだからこそメンバーの繋がりを強固にし、ぶつかり合う事があってもユウジが緩衝材となることで円滑にプロジェクトが進んだと言えるだろう。
しかし、周りに無理をさせまいと朝から次の日の朝まで働く、なんてことを毎日のように繰り返し、週末も休むことなくプロジェクトに取り組んできたユウジは体と心に大きな負荷を掛け続けた。
ある夜、遅くまで働き続け、疲れ果てオフィスから出てきたユウジの顔はゾンビの様にやつれていた。
「久々に帰れるなぁ」
しみじみと出るその言葉を第三者が聞いたら思わず涙ぐむのでは?と思えるくらい哀愁が漂っていた。
フラフラと駅へ向かう足取りは酔っぱらいのようにも、ゾンビのようにも、何かキメてる人にだって見えるありさまだ。
しかし、彼は久々に帰れることへの幸福感と、何とか皆に無理させることなく進んでいるプロジェクトに思いを馳せ多幸感に包まれていた。
しかし、心がどれだけ強かろうと精神と体は正直なもので、視界はぼやけ、頭が重く思うように体が動かない。
横断歩道が青になり、道路を渡ろうとした瞬間クラクションのけたたましい音が鳴り響きそちらに目を向ければ猛スピードに突っ込んで来る一台のトラック。
「…そうか、これが自分の死か……やり残したことがあまりにも多いなぁ…。プロジェクトの完成まであと少しなのになぁ………、」
無意識に体は命の危機から逃れようと動くが、毎日の激務がたたり思うように動かない。
理性がこれはもう間に合わないだろう、と早めの決断を出しているが本能がそれを無視した行動に移す。
そんな自分の体の動きを冷静に分析しながらユウジは最後に思った。
「あの子に謝罪したかった…」
次の瞬間視界が真っ暗に染まり20年と数年の人生に幕を閉じたのだった。
〇 〇 〇
(…何?)
意識がある事に混乱しながら目を開ける。
大きい。
目を開けると世界がデカくなっていたのだ。
自分でも何を言っているのか混乱してしまうが、そうとしか言い表せない。
体を動かそうとするが思ったように動かない、まるで自分の体じゃないみたいだ。そういう例えが一番しっくりくるようなぎこちない動きなのだ。
疑問に思い自分の手を見てみる。
小さい。
葉っぱの一片のように小さく便りのない赤子の手だった。
その事実に混乱しながらも冷静な部分が状況を整理していき、結論が出た。
恐らくこれは転生、というものであると。
前世でたまにアニメなどを見ていたからわかったことだ、アニメは娯楽でしかないだろうと決めつけていた事にアニメーターや原作者に謝罪しなければ、と思いながら周囲の状況を調べる為に首を何とか動かす。
天井絵、シャンデリア、異様に広い部屋、メイド、高級そうな調度品、メイド!?
流石に驚いた、まさか今生で初めて見る人物がメイドとは、普通母親じゃないのか?いやもしかして彼女が母親だったりするのだろうか?いや、それはないか。自分を微動だにせず見つめてくるこの女性に母親としての愛情が感じられない、というより上位者を見る目を向けている。
(子供に向ける様な目じゃないな…)
ユウジはその類稀な洞察力で彼女の立場を即座に看破した。
しかし理解したのは一部の彼女の能力についてだけだ。
「殿下、どうなさいましたか?」
彼女は赤ん坊である自分に敬語を使い、あまつさえ気遣いある言葉を投げかけた。
俺のオデコを触って熱を調べたり、お腹が空いているのかとミルク袋を口に近づけたり、眠いのか、抱っこしてほしいのか、あるいはオムツを変えてほしいのか、と色々調べられた。
…えぇ、もちろんパンツを剝かれてしまいました。しかし今生ではこれが普通になってしまう。これは受け入れていくしかないだろう。
あぁ、オムツを卒業できるように早く何とかしないと…。
異世界に転生して殿下になった俺は全人類の救済を求めて奔走します @tosei4
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