本作はルイスとティトの猫獣人兄弟が快刀乱麻の活躍をみせる王道の怪盗アクションです。
怪盗アクションってなんだ?と思われるでしょうが、ルイスの双剣による見事な殺陣とティトの魔道具を使った巧みな技で散りばめられたアクションシーンが本作の見どころであると思うので勝手に名付けました。
そして一番はルイスとティトの兄弟のキャラ付けのうまさです。
猫獣人の特徴を生かした猫耳と尻尾で表す感情表現はもとより、過去にあった出来事で貴族が嫌いになり二人だけで生きてきたバックボーンが現在の二人の絆にいかに影響を及ぼしているか、確かな裏付けの元に性格と立ち位置があり納得のもと感情移入ができます。
また、どちらか一方に依存しているわけでもなく兄に対しての尊敬や憧れはあってもお互いにカバーし合いながらどちらかが欠けても成功しない問題に立ち向かいます。
兄弟といっても仕事に関しては対等なとても良くできたバディもので万人が楽しめる作品だと思います。
主人公とは物語の世界のおける「基点」であり、その存在をどこに置くかによって、物語世界の見え方は大きくその色彩を変えるものであると思います。
などとえらそうに言いましたがあくまでこれは私が個人的にこう思っているというだけのことですし、そのうえで、敢えて前置きとして言及までもないようなごくありふれた事柄だとも思っているのですが。
けれど、然るに。
たとえ同じ物語世界であっても、主人公の置かれた立ち位置によって描き出されるものは変わってゆくはずです。
世界は信頼に値する友人であるか、あるいは自分から多くを剥奪しようとする敵であるか。主人公は世界の日差しがあたる場所から広く高い空を仰いでいるのか、あるいは陽の当たらぬ暗がりからうつむき加減に路地裏の狭い空を見上げているのか。
世界は美しいか。世界は戦場か。世界を護るか世界を壊すか。云々。
あるキャラクターからはAと見えたものが、異なるキャラクターからはBと見える。その軋みであったり相克であったり。立ち位置こそ異なれ、いずれも「主人公」という立場なればこそ、等しく描き出され立体的に世界を構築しうる物語。
いいと思います。イエスなのです。私的にそういうのとても好きなのです。
本作、『ツインズソウル2』は同作者氏による『ツインズソウル』から続く直系の続編であり、同時に前章の主人公アルフレッドを中心とする人間関係とは異なる領域のキャラクターを物語の軸に据えた、新たな主人公による物語でもあります。なんか、気が付いたら前作は「ツインズソウル1』と改題されていましたがそれはそれとして。
前章の主人公アルフレッドくんは、言わば正統派の主人公であったと思います。勇敢で理知的で紳士、周囲に恵まれひとに愛される、育ちの良さを感じさせる青年であったと受け止めています。
翻って本作の主人公である怪盗ナバーロ――ルイスとティトの兄弟は、そうしたアルフレッドの在り方とは立ち位置を異にして。
彼らは義賊であり、自分達の力を頼みに腐敗した権力――ひいては自らを囲むのシステムに叛旗を翻す在り方の主人公であると受け止めています。その在り方を主人公たらしめるのは、彼ら自身の善性であり、「怪盗ナバーロ」としてはっきりとした形で筋を通す、確固たる芯の通った振舞いこそであると読み解いています。
本作の主人公は「怪盗ナバーロ」の兄弟ですが、しかして前作主人公アルフレッドや双子ヒロインのリリアーナとカテリーナも物語へと参戦し――というか、本作は前作で彼らが関わってしまった《封魂結晶(アニマ・クリュス)》の『争奪戦』というべき仕立ての物語なのですが――果たしていかなる展開へと転がるものか、《封魂結晶》の帰趨をめぐり、アルフレッド達と怪盗ナバーロはいかに対峙し、あるいは手を取り合うのか?
そうした、「物語の両端に立つものが共に主人公である」がゆえの、どんな方向へ転げ落ちてゆくか定かに見極め難い緊迫。
たまりませんね。たまりませんよね? たまらないって言えよ面白いでしょ面白いもんね?(圧
本作は、そうした趣と面白さを打ち出した活劇です。
前作から読んでもよし、本作を読んでから前作へさかのぼってもよし。
どちらでもきっちり読み込めると思いますので、よろしければお好きな方から。
是非に!