第10話
さて、俺が寝ている内に、
ウチの
…あぁ、これから
ていうより、今も胃が痛いから、マジで胃に穴が開いてそう。
「陛下、世界樹の雫です」
「ありがとう」
差し出された薬をもう一度飲む。
世界樹の雫といえば、死者でも蘇らせることのできる伝説上の薬とされているのだが、今は俺の胃薬となっている。
もう一度言う、俺の大切な胃薬となっている。
と言っても、大切な薬なのは確かなのだが、効果は効いた気がしない。
なにが伝説の薬だよ。
俺はこれから、さらに胃薬を使う羽目になる
「ブランがいないな」
そう、愛しの妹たるブランが見かけないのである。
「確かに見当たりませんね。家出でもしたんじゃないですか?」
イブリースの発言に───そんな馬鹿な───と思うが、よくよく考えてみると、無断で2年も家を空けていたのだ。
妹はそんな兄に嫌気が差して、家出したのかもしれない。
最近、俺をよく無視していたし、ついに忍耐の袋が破れた感じか。
………あ、普通に涙が出そう。
流石にそんな思いで出て行ったとしたら、追うのも気が引けるので、妹の場所だけは把握しておこうと思い、惑星全体に【
今の俺の力を持ってすれば、低位の魔法でも惑星を破壊できるように、【
「いない………ブランが俺の【
だが、心の中でその可能性を排除する。
ちょっと酷な意見だが、今の俺からの魔法を
俺はさらに注意深く【
とりあえず、そこに転移してみると、ブランの魔力残滓の近くに、奇妙な魔法の痕跡がある。
俺はその魔法を痕跡から、何とか復元しようと試行錯誤していると、後ろからイブリースがやってきた。
「主様、急に転移しないでください。今日は魔神王陛下の誕生を祝ってパーティーをすると言うのに……………おや、主様はどうやら珍しい魔法を扱おうとしている様子で」
イブリースは、俺が復元しようとしている奇妙な魔法の正体に心当たりがある様子だった。
「ん? イブリースはこの魔法について知っているのか?」
「知っていますよ。かつて大賢者が使っていた、【
「【
「あぁ、主様に分かりやすい説明ですと、要は異世界転移の魔法です。世界と世界の間にある次元という名の壁を跨いで転移することができる魔法なのですが、その魔法陣は私の知らない魔法言語を使っていますね」
「………………」
ふむ、イブリースの言っていることが正しいのだとしたら、ブランは異世界転移の魔法に巻き込まれたということらしい。
……まずい事態になったな。
ブランが簡単に死ぬとは思わないが、万が一ということもある。
一応、ブランに掛けておいた魔法が発動していないので、命に別状はない………と思いたい。
世界を越えて、俺に魔法発動のアラームが鳴るか分からないが、多分大丈夫と思いたいところだ。
「……ある程度は復元ができた」
試行錯誤し始めて10分くらい経って、魔法陣の大部分を復元ができた。
「よし、これぐらい復元できたらいいだろう。……俺はブランのところに行くけど……イブリースも行く?」
「えぇ、主様が行くところが例え天界だろうとも、お供しますとも」
そう言って、ニッコリと笑うイブリースに胡散臭さを感じる。
こいつは本心から、この言葉を言っているのだろうか。
多分、本心じゃなさそうだけど。
「じゃあ、行くか。【
前の俺ならそれなりに魔力を吸い取られたであろう魔法も、今の俺からすれば微々たるものでしかない。
魔力を注いだ魔法陣は、眩い光を放出し、気づけば知らない場所で立っていた。
「…本当に異世界のようです。私達が住む世界と違い、魔力濃度が薄いですしね」
「そうなのか?」
「えぇ、それに……どうやらこの世界はシステムに管理された世界です」
「システム?」
「…そういえば、異世界について主様に説明したことがありませんでしたね」
そう言って、イブリースは異世界について説明してくれた。
何でもイブリースは長い年月を生きていた高位悪魔なため………今は高位魔神だが。
……まぁ、そんなことはいいとして、話を戻すが、イブリースは長い年月を生きてきた分、多数の世界に召喚された経験があると言う。
そんなイブリースの異世界説明だが、世界の種類というのは大まかに三つに別けられるらしい。
一種類目は、自然に生まれた世界。長い年月をかけて、生物が住める惑星ができて、生物が偶然に生まれる。まさに奇跡の世界。その最たる例が、俺の前世の地球ということだ。
二種類目は、神が生み出した世界。異世界はこの種類の世界が大半らしい。例として、ラノベとかで
そして三種類目は、廃棄世界。元は神が生み出した世界だが、その神が別の世界に行ったか、管理することを放棄、管理者たる神が殺されたなどと、理由があって神がいなくなった後の世界のことらしい。
そして、その廃棄世界とやらが、今世に生まれた世界ということらしい。
と言っても今世の世界の管理者たる神々は、イブリースが言っていた神々と悪魔の大戦で全て殺したらしい。
まぁ、全ての神々を殺したというが、あくまで一つの世界に住む神々を全て殺したというだけで、別世界にも神々がゴキブリの如くいると、不愉快そうな表情を浮かべながらイブリースは言う。
「じゃあ、この世界は
「えぇ、合っていますよ」
そして俺は一つ、気になることがあったのでイブリースに聞く。
「ふぅん、だったらブランもスキルを獲得しているのか?」
「いえ、ブランお嬢様は授かっていないと思いますよ。スキルを授かるということは神のシステムの恩恵を受けているということですから」
「つまり、どういうことなんだ?」
「…要は神の加護を授かることと一緒ということです。ですがブランお嬢様は別世界に住む神……主様が既に加護を授けていますから、スキルを獲得するということはありません」
なるほどな。
俺はイブリースの説明を聞いて納得する。
「…見つけた」
そして俺は、イブリースの異世界の説明中でも、【
「…行くか」
【
そして目に映る光景は、4人の高校生ぐらいの年齢の子達が息絶え絶えの様子で、何かを囲んで守っている様子。
その守っているものが気になり、見てみると、今にも命の灯火が消えそうなほど弱々しいブランの姿が目に映った。
なぜか転生したら人間ではなく、悪魔族を統べる魔神王に!! @SYU56
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