第8話


 ひゃっは――――――――――!死んだ死んだ確実に死んだぜこれは!頭からガブッと!全方位に飛び散る茶色の液体!消化されてお前はこの世から消え去る!いやっフ――――――!最高だぜ!

「生き返り」なんてあるわけねえだろ馬鹿が!馬鹿は死んでも治らないとは言うがマジだったのかよ!


「女神様みたいまの?」


「いいえ」


「何で?みましょうよ一緒に。あ、あ、ブルー死ぬよブルー死ぬ!うわー死んじゃったー!まさか丸吞みとはねー」


「面白いですか?」


「面白いに決まってるでしょ。人が死ぬ瞬間を見るのが一番楽しいんですから」


「そうですか」


「あの、なんでそんな反応薄いんですか。殺してくださいって言ったのは女神様なのに」


「使い物にならなくなったごみを処分するのは当然のことでしょう。馬鹿げた感情など私にはありません」


「まじかよ……」


「次の転生者が埋まったので、早く!」


「おっけ」


 それからもモニター越しに死ぬ瞬間を目に焼き付けていく。ティラノサウルスから逃げまどい、食われる様は俺様にとってごちそうでしかなかった。逃げろ、逃げろ、もっと苦しめ。


「早くといいましたが?」


「ちょ、ちょっと待てよ!もっと楽しませろ!」


「……あなたは「白」という色になれたことで動物を無から作り出せる。しかし、そうじゃなければあなたも向こう側であったことを自覚してください」


「たらればの話すんなよ。俺様はな、選ばれし神なんだよ!」


「いいえ、たらればの話ではありません」


「あ?」


「次の転生者の中に、新たな白色が誕生されました」


「はあ……?お、おま、は?」


「つまり、あなたはお役御免ということで」


「ちょ、ちょまて!急にやめろよ!……し、白色に生まれ変わる確率はゼロに等しいって話だったはずだ」


「だからその0.1パーセントを引かれたのです」


「な、いやだからといってなんでお役御免になる?whiteが二人いてもいいじゃないか」


「効率が悪いんですよ。あなたが居ると」


「あ……?」


「私はあなたにお願いしたはずです。多種多様な生き物を描いてくださいと。それすら守れない。更に「就業時間までに生き物を五匹塗らないとインクをあげない」などという自分ルールを追加し、従業員のパフォーマンスを下げる始末」


「それが悪い?」


「悪いです。社会人として最低ランク。なので…………処分します」


 おい、おい、おい!人はここに転生されるとき、自動的に「色」が決められる。茶色、赤色、黒。そんなかでも特殊なのが白色だ。白は千人に一人レベルの確率らしい。この仕事全体を牛耳る神様でさえ、確率を操作させることは不可能。

 養殖はむりっつーわけだ。ほんとに、ほんとにか。ウソ、だろ。

 ようやく恵まれたと思ったのに!


 くそ、くそ、くそ!


 いつの間にか俺様whiteは仕事場の地球にワープさせられていた。

 おいおい、ウソ、だろ!


「俺を天界へと戻しやがれ!」


 やべ!後先考えず大声で叫んでしまった。

 足音…………。足音が聞こえる……。

 おい待てよ。マジで待てって。巨体が向かってきてるって……!しにたくねえ、死にたくねえよおお!嘘だぁ!

 死に物狂いで走る。死に物、狂いで、俺は、俺は走る。


「あ」


 やっちまった。逃げているつもりだったのに、逆に鉢合わせしちまった。

 俺様whiteが見たのは、最後の一人と思われるグリーンを平らげるところだった。大きな牙に貫かれ、グリーンは口の中へと消えていく。ティラノサウルスは鼻の穴を大きくし、辺りを見渡す。まだ満足してないのかよ。


 女神ぶち56してやる!俺様をこんな目に合わせやがって……。


「ギュオオオオオオオオオオウウウ!」


 うるさい!黙れええ!


「グルルルル………………」


 やめろ、やめろ、こっちに来ないでくれ。こっちにくんなよ……ギャアあああ!


 見つかってしまった……。チューブ部分を引き裂かれ、千切れた部分からインクが漏れ出している。


「ギュオオオオオオオオオオウウウ!」


 来るな、来るな!俺様は地面に落ちた石を投げながら逃げる。なのにびくともしない!歩幅が全然違う!すぐに追いつかれる……。やめろ、やめろお!俺様whiteはこの世で一番偉いんだぞ。恵まれた存在なんだぞ。こんなことがあっていいわけないだろ……!

 あ……………………。


 ティラノサウルスの口が背後に迫る。俺様whiteはなんとか逃げようとして、地面に落ちていた石ころで転んだ。


 やめろ、やめろ、やめろおお!死ぬべきはあの女神だ。死ぬべきは神様だ。俺は悪くない。なにも、なにも、何も悪くない。

 俺は身をよじりながら後ずさる。

「死にたく、死にたく、死にたく、死にあああ………………!」


 右腕が貫かれる不思議な感覚。体が宙に浮き、俺は今ティラノサウルスに持ち上げられていることを知る。ヤダヤダやだやだウソダ、ウソタウソだァァァァ!


「ちょ、ちょ……」


 びちょ!びちょ!びちょ!ぶちゅうううううう!

 

 

 

終わり


 

 

 

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○んだ方がマシな仕事とはどんな仕事?それはな、生き物に色を塗る見返りもクソもないつまらん仕事のことだ ぱーかー男🧀(ヨシタカシュウキ) @yoshitakashuuki

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