第4話 戦いの火ぶた
「おい———待てよ……」
「あれが……地球?」
敵———ドラゴンの背後にある緑の星。それを地球だと、取り返すものだとセレナは言った。
だが———、
「海が、緑色じゃないか……」
俺には彼女の言葉が信じられなかった。
青い色を緑だと言ったり、大地の森にフィーチャーして〝緑の地球〟などと言ったりするが、俺の視界の中にある星は海が緑色、完全なグリーンだった。
そして、大陸の形が違う。
中央にひし形の大陸があり、その周囲を囲むように四つの三角型の大陸がある。最初からそのようにデザインされたような大地。俺の知っている地球の大陸とは全く違う形。
そして———その惑星の周囲には衛星が白い三つ浮かんでいた。
地球の衛星と言えば〝月〟唯一つ。
「あれは———地球じゃあない……」
俺が転生した先は遠い未来だ。
だから、地球がテラフォーミングをして大陸の形が変わり、海の色すらも変わってしまう。そんなことがあるかもしれない、さも熱帯の恐竜が闊歩する大地から氷に包まれた氷河期に移り変わったように。
だが、月が三つは言い訳ができない。
どんなに未来になろうとも、こうはならない。
ここは地球ではない。
『行こう! ローニン隊! ドラゴンを迎え撃とう!』
『『『『了解!』』』』
「あ、ちょ!」
戸惑う俺を置いて、セレナたちローニン隊の
戦闘が始まった……。
セレナのオレンジ色のTGがキャノン砲をぶっ放して竜をせん滅し———、
ミルカのスカイブルーの機体が操る金属プレートが縦横無尽に空間を飛び回り———、
アリアの操る赤い機体が目にもとまらぬ速さで竜を翻弄し———、
レリエルの乗る黒い機体が巨大な刀で次々と竜を両断していく———。
やがて、四機のTGがドラゴンの発射する炎弾により損傷をするも、サイの乗る緑の機体の胸から光が発せられ、それを浴びるとたちまち損傷個所が修復していく。
「……一方的じゃないか」
宇宙を飛ぶ大量のドラゴンたちを、まるで羽虫かの如くローニン隊のTGはバッタバッタとなぎ倒していた。
『当然だな』
俺の言葉に少女が答える。
カナン・ストレリチアの顔がモニターに表示されていた。
『TGは人の感情に呼応して力を高める。つまり、気分が良ければよいだけ、出力が上がるというものなのだ。そして、今は皆絶好調。君と一緒に出撃しているのだからな』
「それはつまり———、」
『危ないぞ』
「え?」
会話の途中だったが———ドラゴンの牙が眼前まで迫っていた。
生命の危機———!
慌てて操縦桿を操作し、機体を傾かせて避ける。そしてブースターを点火———ゴスペルが高速で前進する。
「————ッ!」
ドラゴンが止まって見えるほどの高速移動。だが、操縦桿を傾けると感度良く機体は反応し、ぐるっと速度はそのまま、弧を描いて反転する。
そして———操縦桿についているスイッチを押すとゴスペル両翼のレーザー砲が火を噴く。
前方のドラゴンの一匹———機体を傾けて狙った。そして、見事にゴスペルのレーザーはドラゴンを貫いた。
「……意外といけんじゃん」
戸惑いながらも、まるで体が覚えているかのようにゴスペルを俺は自由自在に操り戦場を駆けた。この俺の人格が覚醒する前、ローニン・シンタニとして生きていた人格があるはずだ。そいつの習得した技がこの体にしみこんでいるのだろうか。
俺はロボットではなく、鳥のような戦闘機で次々とドラゴンを落としていく。
『流石は隊長! すっげえぜ‼』
『お見事ですわ!』
アリアとミルカが俺を称える。
『流石だな……』
ローニン隊のメンバーだけじゃなく、TG開発者のカナたんも満足げに笑っている。
『そのまま敵を倒し続けたまえ。そうすれば士気があがる。君の活躍を見るだけで、女の子たちは悦ぶのだからな』
「俺の? どういうことだ?」
戦いの最中だ。
だからあまり脳のリソースをカナたんとの会話に割けず、適当に返事をする。
『みんな君のことが好きだということだ』
ズキッと………心が痛んだ。
その言葉は———はっきりと俺の脳に届いた。そして、俺の心を刺した。
そんな俺の様子をカナたんは察することなく、言葉を続ける。
『そして———君の機体ゴスペルは彼女たちのテンションを更に高めることができる———合体によって!』
「合体……」
あの、TGという女性型のロボットと俺が合体するということか……。
『きゃあああああああああああああああああああああああ!』
「なんだ⁉」
思考をしていると、遮るようにスピーカーからセレナの悲鳴が響く。
セレナのオレンジ色の機体の方を見る。
「なんだあれ……?」
ドラゴン相手だと無双をしていたセレナ。だが、彼女が今交戦しているのはドラゴンではない。
———巨人だった。
真珠のような輝く白の鎧を着たような光る目をした巨人。全身が謎の発光をしており、オーラを纏っているようにも見える。
『あれが敵の指揮官機———
「
「このドラゴンを率いている敵の親玉だ]
セレナの機体はキャノン砲を持ちながら、動きずらそうに巨人に対してキックをして応戦しているが、接近戦では分が悪い。鎧纏う巨人———
やはり接近戦では分が悪い。
セレナは『クッ!』と呻き、ジェット噴射を利用した高速ダッシュで後方に後退し、距離を取る。そして、キャノン砲を
トリガーを引く———その直前、
魔法陣が浮かび上がる。
「何だ、アレ⁉」
『魔法に決まっているだろう』
直撃する———。
『きゃあああああ! 強すぎる!』
セレナの機体は爆発し、表面に損傷を受けながらも
「セレナ‼」
『何をやっているんだロニ! ボーっとしてるんじゃない!
「でも、どうしてロボットが魔法を使えるんだよ!」
『魔法人が操っているからだ。当然だろう!』
「人が……⁉」
あの真白の鎧を纏う巨人の中には———人がいるのか?
そう言われると確かに腰が括れていて手足もすらっとしたデザインだった。鎧の上からでもわかるほど……乗っているのは恐らく女性だ。
何故それがわかるのか、なぜそれが確信できるのか。
それは———、
「おっぱいでっけぇな……」
『『はぁ⁉』』
宇宙空間でぷるん、と揺れる。
敵———
それはもうたわわに
えっ、俺の専用機っておっぱいの大きいロボットとしか合体できないんですか? あおき りゅうま @hardness10
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。えっ、俺の専用機っておっぱいの大きいロボットとしか合体できないんですか?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます