【練習】テーマ:百合、略奪愛【掌編小説】

沙路 涼

第1話

わたしはあいつが憎い。公園で傘越しに見る智花は瞳に涙を携えて、今の彼氏が浮気していることを話してくれた。昨日、智花が学校から帰る途中、智花の彼氏が別の女を連れて家に上がり込むところを見てしまった。智花はそのあと彼に問い詰めたが、「あんなの遊びに決まってるじゃん。俺が好きなのはおまえだけだよ」と弁明してきたらしい。智花はどうしたらいいかわからずに私に相談してきたのだ。「だから付き合う前にいったじゃん、あいつは良いうわさ聞かないよって」わたしは智花の事を考えず自分の気持ちで智花を否定しまった。雨は更に強く降りしきる。

「だって気持ちにこたえないとって思ったから……」「そんな誰彼構わず気持ちにこたえれるの!?だったら私の気持ちにも答えてほしかったよ!!」「え?それってどういう……」「私の方がずっと小さいころから智花の事好きだった!女の子同士だからずっと我慢してた!あんな男に智花を取られても、智花が幸せならそれでよかった!なのに……なんで……」ずっと抑えていた感情が嗚咽と共に出てしまう。智花がそっと頬をなでてくれた。「ごめんね、わたしも凛ちゃんのこと好きだった。でもそれはおかしい事なんだって言い聞かせてきたんだ。私は知らない人の気持ちより身近な大事な人の気持ちを踏みにじってきたんだね」智花が背中を向ける。「凛ちゃん、私決めた。あの人と別れてくる」「え?」「私は私の事を大事にしてくれる人の気持ち大事にしたいから。あと自分の気持ちもね。だからここで待ってて」「智花!」声をかけたが智花は走っていってしまった。雨はやんで、かけていく智花の顔は明るく、光が頬に刺し、その天使の梯子は空まで続いていた。

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【練習】テーマ:百合、略奪愛【掌編小説】 沙路 涼 @sharo0826

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