お前には黙秘権も弁護士を呼ぶ権利もねえッ!!!!

@HasumiChouji

お前には黙秘権も弁護士を呼ぶ権利もねえッ!!!!

 ボゴォッ‼

 その音と共に、女性の口からは血と折れた歯が飛び出した。

「な……なにするんですか……警察官が、こんな事をして」

 ドゴォッ‼

 続いて、先程のパンチで床に倒れてしまった、この女性の腹に蹴りが入る。

「ぐ……ぐへっ……」

「我々も、こんな事はやりたくないんですよ……」

 取調べをしている2人組の男性警官は、絵に描いたような「善い警官と悪い警官」だ。

 「善い警官」の方は、今時、映画やドラマにも出て来そうにないほどステレオタイプな「高価たかそうな銀縁眼鏡に高級背広の冷徹なエリート」と言った外見で……「悪い警官」の方は、顔は無精髭にボサボサの髪のチンピラまがい、背丈はそれほどでもないが、肩幅も広く、首や腕や足も太く、ネクタイは緩み、背広はヨレヨレ、ワイシャツは第2ボタンまで外し……靴は履き古したスニーカーだった。

「おい、おめえは、とっとと、俺達が用意した書類に名前書いて拇印を押しゃあいいんだよ」

「な……何を言ってるんですか……弁護士を……」

「おまえには‼」

 蹴った。

「弁護士なんざ‼」

 更に蹴った‼

「呼ぶ権利はねえ‼」

 また蹴った。

「この非国民がッ‼」

 蹴った。蹴った。蹴った。何度も蹴った。

「このままでは……貴方は死んでしまいますが……それは我々としても望ましくない。貴方が、この書類にサインしてくれれば……医師に診察させますが……どうですか?」

 別に長期間拘束されていた訳ではない。

 だが……。

 取調べを受けている女性の目は……いわゆる「死んだ目」と化しつつ有った。

「本当に……医者に見せて……もらえる……?」

「ええ、じっくり診察と治療を受ける事が出来ますよ。費用は警察持ちで」

「は……はい……えっ?」

 書類にサインしようとした途端……女性の表情は……。

「な……なに……これ?」

「見ての通り、ですが……」

「そ……そんな馬鹿な……」

「貴方が受けた負傷は……貴方の内縁の夫によるものです」

「な……何を言って……」

「我々は、あくまで被害者に事情を聞いていただけなので、この部屋で起きた事は録画されていません」

「そ……そんな……」

「そして、貴方は容疑者ではなく、被害者だったので、勝手ながら弁護士を呼ぶ必要は無いと判断しました」

「ま……待って……」

「医師による診察と治療を受けたければ……そして死にたくなければ、早く署名して下さい」


「あのねえ……公安さんさぁ……何やってんの?」

「すいませんね。ここんとこの不祥事続きで、ウチの部署は検察や裁判所の覚えが目出度くないんですよ。代りに、貴方の部署で、我々が捜査してる男が情婦レコを暴行した容疑で令状フダを取って来てもらえませんか?」

「いい加減にしてよ……」

「何言ってんですか? 。嫌ですか? ああ、じゃあ、娘さんの通学路を、貴方を怨んでる刑務所オリから出たばっかりの奴に教えましょうか?」

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