やがて連理になる

 ヒナツの退室後。報告書をまとめていたテルナに、ミユキが近づく。

「テルナ群長、少し宜しいですか」

「いいよ、別室?」

「ええ、二人でお話できれば」


 人のいない、防音の施された会議室へと入った瞬間。

「あのあのあの、気持ち悪くなかったですか私!!」

「大丈夫、大丈夫だぞミユキちゃん」

「ってか感じ悪くもなかったですか、今日もあんなツンツンしたことばっか言っちゃって、」

「それはもうキャラだから大丈夫だぞう~……ああ泣いちゃった、よしよし」


 さっきまでの大人びた雰囲気が嘘のように、ミユキは泣きながらテルナにすがりついていた。


 ヴァリリア聖女学園の天才、「白銀の峻厳」と呼ばれるクールな魔法少女、ミユキ=シモザキ。

 その正体はというと、依存心が強く人付き合いの苦手な16歳である。


「ひぐっ……今日もヒナツさん超可愛くて、だからケガなんかさせたくなくて、全部自分で済ませたくて」

「うん、気持ち分かるよ」

「けど、大好きだからとか言ったら気持ち悪いから……だから上手く言えなくなっちゃって」

「大丈夫、そういう厳しい人も普通にいるしさ」


 ミユキは幼い頃、仲の良い女の子への好意が強すぎるあまり、かえって彼女たちから距離を取られてしまったという。そのせいで人と仲良くなることを避けて勉学に打ち込み、結果として「孤高の天才」になってしまった。


「仲良くしたいのに、怖いんですよぉ……嫌われたくないんですよぉ……」

「うん、辛かったもんねミユキちゃん。けど、ヒナツちゃん器が大きいし、二人だけの相棒じゃん? もっと素直に伝えていいと思うよ、さっきみたいに」

「はい……また頑張ってみます」


 ミユキの背を撫でつつ、テルナは思う。

 悩みながらも励まし合い、懸命に試練に立ち向かう少女たちの姿には。やっぱり、他の何にも替えがたい輝きが詰まっている。


 ドドラを動かす怨念、その発生源がどんな人間だったかは分からないけれど。

 きっとそいつも、そんな輝きに魅せられていたのだろう。呪われた怪物になっても、忘れられないくらいに。

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私たちの百合は国防です! ~壊獣災害対策庁・魔法少女作戦群~ いち亀 @ichikame

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