社会のネジ

社会のネジ

「ブラックだ、でもムショクよりましだよな」励まし合った友は還らぬ　

我よりも凛々しき顔した柴犬よ　代わりに出勤してくれないか

月曜日憂鬱になる月曜日嫌われ者だ　俺と同じで

野良猫とビニール袋を見間違え己の疲労を知っても一人

生きるほど謝罪ばかりが上手くなり　子どもの頃の夢は忘れた

年下に溜息つかれ頭下げ　社用車内で日付をまたぐ

あと何度惨めな夜を過ごしたら僕を肯定できるのだろう

うなだれる駅のホームの若人へ　ブルーハーツを音漏れさせる　

まず先に病院行けと諭されて占い料もしっかり取られ

この街でポイントカードを作らないあの子はたぶん辞めるつもりだ

ＯＬは優しい武器が必要で　ゼロカロリーのゼリーを食べる

紙食べるオフィスの小さな怪獣よ　この憂鬱もきざんでおくれ

横に飛ぶ怒声も明日は我が身だと　考えている　　　考えている

父親は夜景を作る側でした　大人を２つに分けるとしたら

すれ違う県外ナンバーわナンバー　街から出られぬナイチンゲール　

前世では財を成したと占われ　終末みたいな明細燃やす

人知れず紙を補充しゴミを捨て　あなたの羽根はきっと白色

2000回もう辞めようと考えて2001回とどまる僕ら

「向かいます、熱はないです、はい、すぐに」　心は悲鳴をあげていますが

真夜中の退勤電車で見る夢がどうか優しくありますように