第10話

「いらっしゃいエリン。会えて嬉しいわ。話には聞いてたけど、思っていた以上に可愛いわね。これでは心配し過ぎるのも分かるわね」



「はじめまして。お爺様、お婆様。エリン・フォン・オルレアンです。今日から暫くお世話になります。宜しくお願いします」



ホントに家の人達全員心配性なんだから。お婆様、皆にガツンと言ってやって下さい。



「疲れているでしょう。先ずはお部屋へ案内するわ。アームズとエミリアは先に応接室で話しましょう。良いわね?貴方?」



「勿論だよ。二人ともこっちだ」



「ふう。何とかたどり着けたわね。馬車での旅がこんなに大変だなんて思いもしなかったわ。お姉様が居なかったらどうなっていたことか」



帰りを考えると恐ろしいわね。考えないようにしましょう。夕食はマークが作ってくれるはずだから安心ね。王都の貴族がどんな物を食べてるかも気になるけど、どうせ社交界でも食べられるのだからマークの料理の方が安心ね。



夕食に呼ばれて席に着いて暫くすると料理が運ばれてきた。サラダに掛かってるドレッシングは玉ねぎドレッシングね。これは甘くて好きなのよね。



「こんな味のサラダははじめて食べたよ。これなら子供でも食べやすいだろうね」



「そうね。甘いのにしつこく無くて美味しいわ」



そうでしょ。そうでしょ。私が教え込んだマークは凄いんだから。お爺様もお婆様も喜んでくれそうで嬉しいわね。



次に出てきたのは鶏ガラスープ。その次がメインのステーキだ。これはきっとびっくりするはず。



「ステーキか。何か凄く食欲をそそる匂いがするな」



「そうね。はじめての香りね」



これはマークと研究して散々試作して完成した、焼肉のたれなのだ。砂糖を使わずに野菜と果物の甘味で作った特性のタレ。きっと驚くはず。



するとお爺様もお婆様も一口食べて固まってしまった。あれ?美味しくないのかな?ニンニクは少ししか入れてないから匂いも気にならないはずなんだけど。



「これは、これは作るのにどれぐらいの時間とお金がかかるのだ?」



「マーク。答えなさい」



「はい。肉にこの味を染み込ませるタレは、大体6時間程かかります。本日は完成したタレを持ってきていたのでそれを使いました。肉にタレを浸けておくので一時間程です。材料費はこのサイズのステーキだと100食分でこの位です」



「素晴らしい。ワインを使うよりも遥かに安い。手間と時間はかかるが作りおき出来るなら問題ないだろう。アームズ、王都での出展に協力しよう。これ程の味ならなんの問題も無い」



「ありがとうございます。お父様」



「いやいや参ったよ。家の孫にこれ程の才能があるとは。確かにアームズの言う通りじゃった」



え?皆なんの話をしているのかしら?もしかして私だけ知らないの?



周りを見ると困惑しているのは私だけのようだ。



「では出来るだけはやく出店の準備をさせよう」



あ、食べ物のお店を王都で出すのね。なるほど。それをお爺様が手伝ってくれるのね。びっくりしたわね。それくらいなら適当な表通りのお店を借りて改装すれば良いだけなのに。経営をお爺様の所にでも任せるのかしら?まあ私は知らないし何でも良いわね。



それから王都観光でも出来ると思ったのに、屋敷から出して貰えませんでした。なぜ?



「お姉様。私だけ外に出れないなんてひどいですわ。せっかく王都を見て回れると思ってたのに。楽しみにしてたのに」



「こればっかりは仕方ないのよ。その代わり、今日は一緒に寝ましょう。ほら、エリーがくれたお揃いのネグリジェを一緒に着てあげるから」



「本当ですか?お姉様?約束ですよ?では今のうちに準備してお姉様の部屋に置いておきますね」



「行っちゃったわね。元気になって良かったわ。でもあれを着るのね。はぁ。どうしてエリーはハレンチな物ばっかり好きなのかしらね。お姉さんは心配よ」



それから私はとても幸せな夜を過ごしました。あぁ。お姉様。とても妖艶で素敵です。はぁ。はぁ。



そして王城で開かれる社交界に向かう日、私は一般的なドレスを着ていた。



「やっぱりこんな感じのドレスって素敵ね」



この時代特有のドレスって、この時代でないと不自然で浮いちゃうから、今のうちに色んなドレスを着てみたいわね。



「お嬢様、ご自身のドレスはオリジナルで作らなくてもよろしかったのですか?」



「良いのよ。皆は色んなドレスを着たから新しい物が好きかもしれないけど、私はこんなドレスを着たかったのよ」



「そうですね。皆さんと同じドレスなのでよりお嬢様の魅力が伝わってきます。そろそろ参りましょう」



王城に付きホールに案内されると凄く見られてる。それはそうでしょう。とても素敵なお姉様が、とても可愛くてカッコいい服を着てるのだから。そしてその横を歩く美少女の私。きっと絵にすれば、とても素敵な絵画になるはずよ。



私は周りからの注目を他所に社交界を楽しむ事が出来た。


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理想の女の子を作ろうとしたら、異世界で理想の女の子になっていた。 @aira0011

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